スノー・ブロッサム

「ヤァお嬢さんご機嫌よう!雪桜の花見がてらお茶会でも開こうって心積もりかい?だったら、この我輩も交ぜてはもらえまいか?」

唐突に私の背後から、男が話しかけてきた。

ビックリして振り返ると、もっと驚くことにそこには誰もいなかった。


「ねえ今、誰か男の人の声が聴こえなかった?」

空耳にしては、やけにハッキリと聴こえていた。私は、エリックに確認してみた。

でも、エリックはニヤニヤするばかりで何も言ってくれないの。何なんだろう?


「勿論、我輩はちゃんとここにいるともさ。」


「キャッ!だあれ?」


「その可愛らしいお目目をパッチリと開いて、よく見てみたまえ。」

エリックまでが続けて言う。


私が眉間にしわを寄せて、声のした辺りを懸命に目を凝らして見ていると、ボンヤリと何かの形が浮かび上がってくる気がした。


「あっ!ここに何かいるわ。」


「何かとは失礼な言い草だな。」


「ご、ごめんなさい。」


「うむ、素直でよろしい。その素直さに免じて許すとしよう。」

そして、先ほどのボンヤリしていた所から、綺麗なエメラルド色のカメレオンが姿を現した。


「わっ凄い!透明人間みたい!」

私はまたまた吃驚して声を上げた。


「人間ではない。我輩はカメレオンである。」


ん?どっかで聞いたことがある台詞ね。まぁいいわ。


「透明カメレオン?」


「如何にも。」


また変なのが出てきたわ。ここってこういう連中しかいないのかしら?

私が困惑しながらエリックの方を見ると、彼はくすくす笑いながら肩をすくませた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る