バベルの塔

「ウーン解ったような、解らないような雲をつかむような話しだわ。解ったこといえば、螺旋の塔には何か不思議な力が働いているってことね。」

私が正直に白状したところ、


「ボクの今発している言葉だって、実は双子のクリエイターの受け売りであって、この場所を支配している構造契機を理解するまでには相当の時間を要したよ。どうもあのふたりは、支配者=創造主かもしれないと考えている節があるな。それが正しいのかどうかも含めて、それこそ誰にも解らないんだけれども。」

エリックも正直に告白する。


権力者が創造主と知って尚、抗おうとする双子のバイタリティーもまた凄い。


「創造主って神様ってこと?神様の使いにいつも見られているんじゃ、弱気なんて吐けないじゃないの。今が辛いからといって悲観してちゃダメってことかしら。過去を見つめ、今を大切にして考えて過ごし、未来をどう迎えるかがきっと重要なんだわ。でも大変!それにはやっぱり、私は自分の記憶を思い出さなくちゃ!」

今更ながら私は大事なことを忘れていたことを思い出した。本当に忘れっぽいんだから困っちゃう!


「ボクが思うに、キミが記憶を取り戻すには、この螺旋の塔を受け入れて、キミ自身が時間を掛けて模索して知ることが早道じゃないのかな。」


「やっぱりそうなんでしょうね。一度に詰め込むのはとても無理そうだから、じっくりと馴染んでいくことにするわ。」

私は小さいながらも拳と意志を固めた。


「うん、それがいいよ。キミの人生は他ならぬキミ自身のものだ。キミならではの選択肢を探すといい。幸いなことにここでは費やせる時間はたっぷりとあるからね。」

エリックもまた小さく腕組みをして頷いた。

あぁなんて可愛らしい哲学者さんなのかしら。なんだか胸がキュンとしてしまう。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る