バベルの塔
「フフフそうなるね。この螺旋の塔もまた、知覚した真理を具象化した次元とも言える。そのためここでは自己を放棄し、認識を断つということは許されないんだ。そのかわりにボク達自身が望み、獲得していくための自由意志は尊重されているのさ。」
「じゃあハンプティ・ダンプティの選んだ選択はどうなるの?」
「ボクたちのDNAの構造は螺旋状に記録されている。そうした遺伝子の巨大な集合体であるこの螺旋の塔は、別名、世界樹とも呼ばれているんだ。万物の生命の源となるその大いなる力によって、ハンプティ・ダンプティは、可能性を開くためにふたたび生きるべき道を与えられて、明日の朝を迎えられる。」
「だからハンプティ・ダンプティは甦るのね。」
「だが、悲観主義の彼は毎回自由を捨て去る選択をしてしまう。終わることのない無限の連鎖の理由はここに在るんだ。帰結することのない時間は無限にある様に感じられるだろう?でも僕達の生活なんてものは、大なり小なり多少の出来事の相違はあれども、毎日が同じことの繰り返しだ。」
「まあそれはね。ドラマチックなサプライズやロマンスなんてそうそう起こりはしないもの。」
私は知った風な口をきいてみせる。
「結局のところ、ボク達もまた円環運動する永劫回帰の時のはざまを歩いているに過ぎないんだよ。」
エリックがドヤ顔で締めくくった。
マザーグースではないと言っていた意は、ここでようやく理解出来た。でも、その作用については、今の私には解り様がなかった。
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