バベルの塔

「そういうこと。キミの本質は、常に精神として実存する。つまり“我考える、故に我在り”さ。普遍の真理を追求していくには、己が心に抱える苦悩と不安や失望にも真摯に向き合いながら、内なる自己を見つめていくしかない。そうしていくことでいずれは希望を見出せるだろう。」


なるほどね.....記憶を失った私だけれど、ほんの少しだけ明るい展望が見えてきた気がしないでもない。


「ほら、神話にあるパンドラの箱の話を聞いたことがあるだろう?」

思わず黙りこくってしまった私にエリックが語りかける。


「ええ...あるわ。けして開けてはならない禁断の箱を預かっていたパンドラという少女が、衝動を堪えきれずに箱を開けてしまった所、貧困、嫉妬、怨恨、復讐、不安といった様々な悪意が世界中に飛び散ってしまったというお話でしょう?でも箱の底には一つだけ、最期に希望が残っていたのよね。」


「そう。その箱とは君の心のことを指しているんだ。ああした寓話ってのは大抵、身近な物事の本質を教えるべく、比喩的に喩えて表現されているものさ。誰しも心の内に負の感情を抱え込んでいる。でもそんなネガティヴだけを見つめていたらおかしくなっちまうだろう?希望というポジティブな感情を見つけだそうと意志を働かせることが大切なんだよ。」


「そっか、では私の心はアリスの箱ってワケね?」




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