バベルの塔
「フフフ...そういうこと。自分の存在意義すなわち実存を獲得するためには、意識的に自分自身を肯定し、どう生きていくのかを決断しなけばならないんだ。」
エリックもまた熱弁を振るう。
「でも世の中にはハンプティ・ダンプティの様に死ぬことを決断する人だって居るわ。そういえばエリック、初めて会った時に、あなたは彼が明日にはまた元に戻って、屋上から元気に飛び降りるから安心しろとか言っていたわね。あれはどう意味なの?」
胸につかえたまま、その内に聴いてみようとずっと思っていたことを訊いてみる。
「ハンプティ・ダンプティは、支配者の監視下にある現実に嫌気がさし、飛び降りて死ぬことで、自分自身の意志を示そうとしたんだ。それは解るだろう?でも自ら思考を断つという行為は、結局のところ、自分という主体性を放棄したことに繋がる。体制に向き合う事なく、敵前逃亡し自己逃避したという事は、つまるところ自分という存在そのものを否定したも同じなのさ。」
「彼が生きることを諦め、自分の存在意義を見失ってしまったから?」
「簡潔に言えばね。さっきも言ったけど、この螺旋の塔は、ボク達の意識によって常に変化する次元の世界であり、かりそめの幻影に過ぎない。表象的な現象を知覚によって認識し、人それぞれの異なる思考によって秩序づけた結果なんだ。」
「そう...」
繰り返し聞かされることで、私にもこの不思議な場所の正体が見えてくる様な気がした・・・。
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