バベルの塔
私とエリックは、家の外の縁側に並んで腰掛けて、ふたりだけのティー・パーティーを催した。
ゴーストが入れてくれたティー・カップを前にして、やっぱり最初私は何か毒でも入ってやしないかといぶかしんだものの、エリックがその様な心配はないとうけおってくれたので、安心してアプリコット・ティーの薫りを愉しむことにした。残念ながらエリックには同じティー・カップでは大き過ぎたので、お猪口に移し替えてから仕切り直した。
「キミは是非ともアリスを演じるべきだと思うよ。ねぇいいかい、演じるということは、自分以外の何者かを模倣することだろう?」
「そうね。・・・でもそれがどうかした?」
「演じることでボク達は自らのアイデンティティを自覚するんだ。キミも失われた記憶を辿るには、まず自分自身を知らなければいけないだろう?」
「うん。確かに一理あるわね。」
「そして自分がなぜこの世に生を受けたのか、一体何者であるのかを知るためには、この社会や自己の存在にきちんと向き合わなければならないのさ。」
「物事の本質は知覚によって存在しているのではなく、意識付けによって実存する。自分の意識を自覚し探究していけば、この存在と本質の意味に近づける、だったわね。」
私だって学習能力の高さを証明してやらなくちゃ!
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