私をオーディションに連れてって

哲学音痴の私には、目まぐるしく早口で捲し立てられる話の半分も理解出来なかった。それでも今の私にとって非常に為になる話をしてくれているという事は、漠然とだが解った。もし、今日の話の意味を、私なりの解釈できちんと理解出来た暁には、私は私の失った記憶を無事取り戻し、自分自身が誰であるのかということを正真正銘思い出せるのではないだろうか。

その知り得たものとは、私が懸命に探し求めていることであると同時に、非常に恐ろしい結果を知る可能性もある。

それでも、目と鼻の先も見えない真っ暗闇に放り出されて、おどおど手探りしながら進んでいるさなか、遥か遠くに蝋燭の明かりが灯されるのを発見した様に、私は今日の会話の中に、記憶探しの解決の糸口を見出した。

彼らの言葉によるならば、私の存在する理由を探求し、私が何者であるのかという謎の答えに辿り着かなければならない。

あゝなんだか大変なことになってきて、頭がパンクしてしまいそう。



「どうもありがとう、ごきげんよう。」

私とハリネズミは、双子のクリエイターに心から礼を言うとオーディションルームを後にした。





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