私をオーディションに連れてって

「キミは先程有り得ないと言ったね。しかし、存在しうる対象とは目に見える物が全てではない。パラドクスとは元々我々の目には見えないものだ。真理、つまり物事の本質とは、我々が認識した時に、初めて存在として出現するのさ。」

マッド・ディレクターが、さらに回答を重ねる。


「だが知らない事自体はけして愚かな事ではない。愚かな者とは、自分が無知である事を知らぬ者だ。キミも自分の知らない事を有り得ないなどと否定しない事だね。キミの意志の向かう先が、常に同時に普遍的な真理の上に成り立っていると考えた上で行動したまえ。」

マッド・プロデューサーは、ご丁寧にアドバイスまで与えてくれた。


「ボク達は嘘つきだが、これが真であり理だよ。信じてくれるだろう?」

マッド・ディレクターは私を見つめる。


「なんだかとても難しいわ。」

私はこんがらがった頭を抱えたくなった。



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