私をオーディションに連れてって

「パラドクスは、出口のない迷路だ。」


「キミは迷路に閉じ込められた囚われ人ってことさ。」


「囚われ人?」


「そうだ。永遠に時が止まったまま終わることのないティー・パーティーを開き続けている帽子屋達と同じだよ。よく見ていたまえ。」

白スーツのマッド・ディレクターが、モニターに向けて、ビデオカメラをパンした。


すると、モニターの中にカメラで撮られているモニターの映像が映し出され、そのモニターの中に、またモニターが。そのモニターの中にも、またモニターが映し出され・・・マトリョーシカみたいな入れ子構造で、奥へ行くほどモニターは小さくなっていき、無限に重なりが続いていったかと思うと、突然、画面が真っ暗にブラックアウトしてしまった。


「今のは・・・?」


「モニターが自分自身を映し出す限界に達して崩壊したのさ。これがパラドクスの正体だ。キミはこうした無限に繋がっている時の回廊から抜け出そうして、むやみに足掻いているに過ぎない。」

マッド・ディレクターが答える。


「それは出口のない迷路で脱出を試みているようなものだ。上から俯瞰で見下ろして視れば、キミは無限に広がる出口なき迷路の中を彷徨い歩いているのが解る。」

マッド・プロデューサーが続ける。


「でも、私は現実には此処にいますもの。」

私は私で反論を試みる。



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