私をオーディションに連れてって
「キャーッ!どうしよう!!」
私が甲高い悲鳴を上げると、ハリネズミが慌ててたしなめる。
「落ち着くんだお嬢さん。今のはハンプティ・ダンプティの奴で、飛び降りは毎度のことさ。ここはマザーグースの世界ではなく、螺旋の塔だからね。明日にはまた元に戻って、屋上からまた元気に飛び降りるから安心しなよ。」
「また、元気に飛び降りるから安心しろですって?引き留めなくていいの?」
私にはハリネズミの言っている意味がよく分からなかった。
「よく覚えておくんだ。螺旋の塔では、毎日はパラドクスの連続で、誰であろうとその無限の連鎖からは、決して抜け出せない。ハンプティ・ダンプティは見た目に違わず、まともな男だから我慢出来ずに飛び降りたのだろう。」
「螺旋の塔・・・?」
再び真上を見上げてみるが、やはり普通の何処にでもあるマンションである。
改めて、ハリネズミを見るとさっさっと彼は私を置いて先に行き、マンションに入るところだった。
「もぉハリネズミさんたら、待ってったらぁ!」
慌てて私はハリネズミの姿を追いかけた。
ハリネズミにとって、よっぽど大切なオーディションらしい。
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