4-15 交わした約束
アルヴァリッドは俯瞰すると、円形だった。
町と外を区切る背の高い隔壁に囲まれた町であり、幸いにも隔壁部分をそのまま魔導陣の外周となる大きな円に見立てて構築する事ができたため、比較的簡単な、それこそ初めての試みとしてはちょうどいい作りをしている町であったと言える。
対して王都は、過去の改築などの影響で円としては少々歪な作りをしている上に、王城は城下町に比べると崖の上に位置している事もあって立体的な範囲を指定する必要があった。
そのため、町にある背の高い建物を幾つか中継地点にして点と点を繋いだり、それぞれ独立させて構築する魔導陣を繋いで範囲を調整したりと、細かな修正が必要だ。
アイゼンさんとランドルフさん、それに僕らの今後の補助をしてくれると言うエルメンヒルデさんの指揮の下、多くの職人が一斉に動き始めている訳だけれど、実を言うと僕は多少なりとも手が空いていたりもする。
と言うのも、僕の役目はそれぞれを見回りながら進捗を確認しつつ、細かな修正が必要だった場合に修正を施すといった、監督役に近いからだったりする。
「――そんな訳で手が空いたからこっちに見にきたんだけれども、どうしたのさ、みんなして」
王城の書庫へとやって来た僕の目に映ったものは、死屍累々となった佐野さんと西川さん、佐々木さんと小島さんの姿。
その場に倒れ込んでいるのだけれど、どうにも危険な笑みを孕んだような表情を浮かべていて、ちょっと気持ち悪い。
「ま、魔導書読んだら、ちょっとね……」
「うぅ……、気持ち悪い……」
佐野さんと細野さんが訴える姿を見て、そういえば僕以外は魔導書を読むとこういった症状に陥っていたような、と思い返す。
赤崎くんと加藤くんも似たような事を訴えていたりもしていたんだけれど、僕は特になんともなかったし、二人が似たような症状になった時も調べ物を優先していたからスルーしたのだ。
すっかり忘れてたけれど、魔導書の事は二人に伝えてもらったんだし、伝わってなかったとしたら僕の責任じゃない。
……うん、問題ないね。放っておこう。
「なんていうか、こう、頭の中に無理矢理知識とかを流し込まれたような、そんな気分よ。気分だけで言うなら最悪よ……」
「あはは、大変だね」
「ゆ、悠くんはこれ、耐えれたの?」
「僕はなんともなかったけど?」
「まさか、この吐き気もスルーした……? さすが悠くん、ずるい」
「すぐ良くなるよ、多分。それよりリンデさんどこにいるかなー?」
愚痴る西川さんと文句を言う佐野さんを放置して、リンデさんを探して歩く。
どうせ禁書が置かれた書架にでもいるんだろうと思いつつ、書庫の奥へと足を進めていると、素通りしようとした一角にリンデさんの姿が見えた。
禁書の所にいると思ったら、どうやら魔導具に使う魔導記号なんかの書物が置かれている一角みたいだ。
「リンデさん、こんなトコでどうしたの?」
「待ってた。幾つか解読できたけど、ユウにもらったメモの中に解らないものがまだある」
「それでここにいたってこと?」
「ん」
短く返事をしたリンデさんがポケットから折り畳まれた紙を受け取って、早速とばかりに僕もそれを開いた。
ウラヌスにアイゼンさんが書いてくれたメモを記憶させておいたので、一応展開して確認してみると、幾つかだけれど見覚えがある文字なんかもある。
なるほど、どうやらアイゼンさんの読みは当たりだったらしい。
「やっぱり、魔導言語として使われているみたいだね」
「そうなの?」
「うん。記号については〈
「じゃあそれあげる」
「いいの?」
「私の分はもうある」
頷きながら答えたリンデさんがどうにも子供っぽくて、ついつい細野さんを対応するような感覚で頭を撫でてしまって――僕は固まった。
「……ん?」
「あぁ、ごめんごめん。ところでリンデさん」
「なに?」
「もしかして禁書に夢中になって帰ってなかったりとかしてないよね? ……ねぇ、ちょっと。ほら、僕の目を見てごらんよ、ねぇ」
「……か、帰ってない……」
だと思ったよ。
なんだかこう、少しベタベタとした感触がしたのだ。
そりゃ洗ってない頭はベタベタもするよね……。
「リンデさん」
「……な、なに?」
「今日帰らないと、僕の作った首飾りの魔導陣書き換えて使えなくするからね?」
「っ!? そ、それは、悪魔の所業……」
「あはは、そんなに褒められてもやめないよ?」
「ほ、褒めてない……っ!」
満面の笑みで伝えてみせると、リンデさんが未だに胸元にかけたままの首飾りを掴んで後ずさった。
追いかけようにもいざとなればステータス差で逃げられちゃうし、かと言ってもいくらなんでも拘束する訳にもいかないし。
しょうがないから、適当に妥協しておこう。
「リンデさん、約束したからね?」
「しょ、承服しかねる」
「そっかー。じゃあ、ちょっとジーク侯爵閣下に転属命令でも書いてもらう事になるかもしれな――」
「今日帰る!」
「そっか、分かってもらえて何よりだよ、うん」
綺麗に着地点を見極めたおかげか、リンデさんも目尻に涙を浮かべているし、満足いく結果だね。こちらとしても説得に応じてくれそうにない以上、
さて、〈
例えばラティクスにあった〈エスティオの結界〉は、〈
だからこそ手を加えられたのだし、同時に阻害もされてしまったのだろう。
あれがもし、こうしてリンデさんが解読してくれた『空白の時代』に該当する言語や記号の体系をそのまま流用されていたら、僕もお手上げだったというのが本音だ。
もしも解析できなかったら【敵対者に課す呪縛】をそのまま流用して使うつもりだったし、そもそも修復や再利用なんて考えは浮かばなかっただろうけれども。
リンデさんからもらったメモを見ながらみんなの元へと戻ると、ようやく落ち着きつつあるらしいみんなが壁に寄りかかったり椅子にもたれかかったりしつつも、なんとか復調していた。
「そういえば佐野さん。みんなに適した魔導書とかあったの?」
「えぇ、お陰様でね」
「ふーん。じゃあ、スキルが融合したりとかしたの?」
「……? スキルが融合って、何それ?」
「え?」
お互いになんだか要領を得られない会話になってしまったせいか、揃って首を傾げるはめになった。
ともあれ、僕も自分のステータスの確認がてらにステータス画面を展開すると、話を聞いていたらしい他の三人もやってきた。
――――――――――
《高槻 悠 Lv:―― 職業:上級神見習い 状態:良好》
攻撃能力:7 防御能力:4
最大敏捷:12 最大体力:8
魔法操作能力:32 魔法放出能力:0
【
【術技一覧】
【
〈称号一覧〉:
〈徹底的な第三者〉・〈女神の抱腹対象〉・〈女神の心を見透かす者〉・〈千古不易〉・〈摂理を覆した者〉・〈叡智の神の加護〉・〈迷宮都市で最も恐れられる男〉・〈神々の注目株〉・〈理を無視する者〉・〈【混沌】の担い手〉
―――――――――――
「……なんか悠くん、すっごくツッコミ所が増えてる気がするんだけど……?」
「私達が知らない間に何がどうなってこうなってるの、悠くん……」
「……上級神、見習い……?」
「ダメ、私パス。見てるだけで頭痛くなりそう」
佐野さんと西川さんはまぁ二人らしいと言えばらしいけれど、小島さんが何やら恍惚とした表情を浮かべてる点と、佐々木さんの頭痛くなるって発言はちょっと看過しきれない気がする。まぁ、スルーするけども。
そういえば、ラティクスから帰ってから僕のステータスは見せてなかったような気がしなくもない。
みんなには見せてもらったんだけど、僕の場合はレベルが上がってないから見ても面白くもなんともないよ、と躱していたんだった。
「まぁまぁ。質問は一切受け付ける気ないから、僕のは放っておいていいよ、うん」
「受け付けないのね……。まぁ、悠くんだし、ね。いちいち驚いてもしょうがないの、かも……?」
気分の悪さも相俟ってか、あまり深く突っ込んだ質問をされずに済みそうだ。
説明しろって言われてもちょっと困るから楽と言えば楽ではあるんだけれど、落ち着いたら根掘り葉掘り聞かれそうな気がする。
「その僕の名前をどうしようもない問題児の代名詞みたいに使うのは腑に落ちないけど、まぁいいや。それで、四人はどんな感じ?」
「うーん、スキルが少し追加されただけよ。まだ試せてもないし、見せてあげるのは今度でいいかしら?」
どうやら佐野さんだけではなく、他の三人もステータスを見せる事に対しては消極的らしい。
実際、ラティクスから帰ってから頼んだ時も、細野さんとか橘さんとかはなかなか見せてくれなかったし、プライバシー的な何かでもあるんだろう、多分。
「そこまで大きな変化がないなら別に構わないよ。――さて、とりあえず僕はもう出るけど、みんなはどうするの?」
「悠くんは仕事なの?」
「ううん、橘さんに練習見に行くって約束しちゃったしね。そっちに行くけど、みんなも来る?」
「あー、だったら私達はもう少し休むわ」
何やらニヤニヤとした笑みを浮かべて佐々木さんがそんな事を言ってきた。
ニヤニヤした佐々木さんの表情が伝播でもしたのか、みんなにニヤけ顔で見送られるまま、ともあれ僕は王城内の書庫を後にして、王立劇場へと足を運ぶ事にした。
ファルム王国内でも由緒あり、最大にして最上の劇場であるところのディートフリート劇場は、外観からして巨大かつ凝った造りとなっている。
こちらの世界ではまだ他の劇場とかを見た事がないけれど、そもそもファルム王国はもちろん、この世界では完全室内型の劇場自体がなかなか珍しい。それこそ、国を代表するような大きな劇場ぐらいで、あとは剥き出しの舞台であったりがなかなか多いらしい。
僕らの知るところであると武道館のようなものとでも言うべきだろうか。
ここで公演する事を夢見る者も多く、ここで公演できれば一流であると箔が付くような、そんな場所だそうだ。
当然ながら正門は閉め切られていたため、裏口側に回り込む。
見張りのオルム侯爵家の私兵の人が立っていたけれど、僕らの顔はしっかりと憶えているのか、僕を見るなりさっさと扉を開けてくれた。
こういうマッチョな人がガードマンみたいに立っているのを見ると、なんだか洋画で見るちょっと大人なクラブにでも入るような気がしてくる。
惜しむらくは、彼らが黒服の黒人サングラスではない事だ。
控室の横を通り抜けて奥へ奥へと進んでいくと、橘さんの歌声とそれに合わせた管弦楽団の演奏が聞こえてきた。
舞台袖に出ないように回り込んで客席側へと向かっていくと、ちょうどアシュリーさんがこちらに振り返ったところで、手招きしてきた。
頷いて返事をして、そのままアシュリーさんがポンポンと軽く叩いた隣の席へと腰掛ける。
「いかがです、ユウ様? これが、今のアカリの実力ですわ」
どこか得意気にも聞こえるアシュリーさんの物言いに、しかし僕も反論する気にはなれなかった。
かつて僕が見た橘さんの歌と言えば、あの文化侵略の時――つまりは魔狼ファムと対峙する事になった、商業ギルドのコンテストが行われた火の精霊祭以来だ。あれからというものの、僕は橘さんの歌声を聞く機会はなかった。
あの時もバンド形式の文化侵略をする前に、鳥肌が立つ程の透き通る声を披露してみせてくれたけれど、今とでは次元が違う。
あの時はまだどこかぎこちなさみたいなものがあったけれど、今の橘さんは歌い慣れ、聴かせるテクニックというものが圧倒的に洗練されている。
昔テレビでオペラ歌手の人が歌っている姿を見た時、本当に鳥肌が立って、曲の世界観に惹き込まれるような感覚を覚えた事はあったけれど、壇上で歌う橘さんの声は間違いなくそれ以上の代物だと確信させられる程だ。
透き通るような高い声に、美しくも力強いファルセット。
オペラを直接見た事はないけれど、テレビのスピーカーからでは感じられない、臨場感と力強さ、曲調に合わせて紡がれる、表現力を表す抑揚のある歌声。
その全てが、普段の天真爛漫でどこか天然めいた性格をしている橘さんとは異なっていて、さらに歌の世界にでも入っているかのような彼女の表情を見ていると、いっそ他の何かが乗り移っているようにさえ見えてくる。
「……すごい、ですね」
「ふふふ、素直ですね。えぇ、彼女は女神に愛された歌声の持ち主ですわ。以前までのアカリが、どこか荒削りで初々しくも力強く輝くような原石だとすれば、今のアカリは美しく削り出され、整えられた宝石。一度見てしまえば、それ以下の者には二度と心を動かす事すらできなくなってしまいそうな程に他の追随を許さない、圧倒的な輝きを放つ宝石ですわ」
語彙の貧しい僕の表現とは裏腹に、アシュリーさんの表現は言い得て妙であると言えた。
確かに、以前の橘さんでさえ十分過ぎる程に凄かったけれど、今の橘さんの歌は、歌というものに大して興味も抱かない僕のような人間でも、間違いなく魅了させてくれる程だ。
……ミミル、あくまでも比喩だから。
その『【天使の歌声】による魅了効果をスルーしました』っていうウィンドウをわざわざ僕に見せたりしなくてもいいんだよ。
デコピンでペシリとミミルを弾くと、「きゃーっ」と嬉しそうに声をあげてでもいるかのように吹っ飛んでいるかのように見せる辺り、ミミルも芸が細かい。
ふと周りを見てみれば、リハーサルを見つめていたスタッフ達でさえ言葉を失って聞き惚れているのが手に取るように分かる。
伴奏する管弦楽団の人達でさえ、橘さんの声に聞き惚れながらも自らの演奏が邪魔をしないようにと、凄まじい集中力で演奏に力が入っているようにも見える。
――あれ?
あの人だけは、なんだかそういう表情を浮かべているように見えない。
「……アシュリーさん。あの人って何をしている人ですか?」
「あの人……? あら、彼はモーリッツよ。今回の公演で演出に使う魔導具とかを整備して手配してくれている責任者なの」
モーリッツと紹介された男の人は、どこか病的さすら思わせる程に痩せ細った男性で、周囲の聞き惚れて恍惚とした表情を浮かべているスタッフとは異なり、むしろどこか悲しげというか、なんだか苦々しげな表情を浮かべているように見えた。
あの見た目で橘さんの歌にあんな表情を浮かべているなんて、浄化されつつあるアンデッドにしか見えない、とは思っても言えない。
そんなくだらない妄想を展開している内に、橘さんの歌は終わった。
観客席に座っていた僕らは他のスタッフの人達と同じように立ち上がり、壇上の橘さんはもちろん、素晴らしい演奏を行っていた管弦楽団の人達にも惜しみない拍手を送った。
「アカリ、お疲れ様。ユウ様がいらしてますわよ」
「ふぅ、お疲れ様ですぅ……って、悠くんいたの!?」
「うん、聴かせてもらったよ。うますぎてちょっとびっくりしたよ」
「ふぇっ!? そ、そう、かな……? あははは……、悠くんにそう言われると、なんかちょっと、照れる、かも……」
顔を赤くした橘さんが目を俯かせながらそんな事を言うものだから、管弦楽団の男性陣はともかく、女性陣にまで仇敵を睨みつけるような目を向けられた。
小動物っぽい橘さんは、やはり男性のみならず女性からも絶大な人気を誇っているようだ。微笑ましいとは思うけれど、その射殺すような目で僕を睨むのは是非とも辞めていただきたい。
「じゃあ、少し休憩しましょうか」
気を利かせるようにウインク付きで僕の肩に手を置きながら告げたアシュリーさんのせいで、何やら僕まで気恥ずかしい気分にさせられた事について密かに呪いを送れないかと思案しつつ、壇上から降りてきた橘さんを迎えようと待っていると、目の前にあった椅子からにゅっと頭が飛び出してきた。
「……細野さん、そんなトコにいたの?」
「今きた。悠こそ、いつの間にか来てた」
「僕は演奏中にこっそりとね」
「さすが悠。ついに私の気配察知能力にまでスルーを……」
橘さんの護衛目的という事で同行していたらしい細野さんの頭をぐりぐと力強く押し潰し……てやろうにも、やはり絶大なステータス差は埋められず、細野さんはまるで頭を撫でられてでもいるかのように目を細めるばかりだ。ちくせう。
「悠くん、咲良っちゃん! お弁当用意してあるから、一緒に食べよ!」
「へぇ、橘さんって料理できたんだ」
「へ? あ、えーっと、ほ、ほら、うん。私も少しは、ほんのすこーしはできるん、だよ? でも今日のお弁当はほら、私じゃなくて楓っちゃんに作ってもらったんだー。ほ、ほら、私もやればできる……なーんて……」
どうやら地雷を踏み抜いたらしい僕の言葉は、橘さんを何やら一生懸命取り繕わさせてしまったらしかった。
「でも、お弁当って二人の分でしょ? 僕は僕で適当に買ってくるから」
「大丈夫。私と朱里はそんなに食べないし、いつも少し多いぐらい」
「うんうん、悠くんもそんなに食べないし、大丈夫だと思うよ! 裏の控室でいつもご飯食べてるから、二人ともいこ!」
橘さんに半ば強引に連れられるような形で、僕と細野さんは橘さんの控室に向かって歩いて行った。
「そういえば、悠。リティは?」
「今日はエルナさんと一緒に修行……もとい、オフェリアさんの孤児院でお手伝いしてると思うよ」
「えぇっ? でもリティちゃんって悠くんの護衛じゃなかったっけ?」
「護衛って言っても、僕は今日は王城の書庫に行ってたからね。護衛について来てもらう必要はないかなって思って」
リティさんはどうにも本がいっぱいある書庫は苦手らしいのだ。
そんな訳で、今日は僕も久しぶりにぼっちな一日を過ごしていたのである。
「ところで悠くん。公演の本番、来れる、かな?」
「公演って……」
「五日後。悠、予定は?」
「うーん、魔導結界の設置予定が、六日後を目処に完成させるってスケジュールだから、なんとも言えないかな。でも、なるべく公演は観に来るつもりだよ」
「ほんとっ!? って、えっと、無理はしなくていいからね……?」
「うん、大丈夫。公演は夜だし、その頃なら時間も余ってると思うから」
基本的にこちらの世界の人は陽が暮れた後まで仕事を続けたり残業したりっていう事をあまりしないしね。アイゼンさん達だって陽が暮れれば余程の急ぎの仕事でもない限りは店を閉め、酒を飲みに出歩くらしいし。
僕としてもそういう切り替えの早さがあってくれる方がありがたい。
まぁ僕の場合、何かしている最中に新しい魔導具の構想が浮かんだりするから早く帰りたいだけだったりもするけれど。
「じゃあ、楽しみにしてるね!」
「それ、僕のセリフじゃないかな?」
「う、それは、そうかも……。じゃあ、楽しみにしててね!」
「うん。それより橘さん、早くお弁当食べないと、細野さんが目ぼしいおかずを全部食べきっちゃうよ」
「へ? あぁっ!? 咲良っちゃん、私にも唐揚げ残してー!」
「所詮この世は弱菜強肉。肉を食べるのは強者のみの特権」
「変な四字熟語作らないで!?」
相変わらず仲がいい二人のやり取りを見て、ついつい僕も笑わされてしまうのであった。
――――この時の僕は、橘さんとのこんな約束を果たす事すらできなくなるなんて、僅かながらにも考えてすらいなかった。
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