第18話 <異境の序曲> 天使その2

天使が加わったことにより、たかし全盛期並みの戦闘力を誇った僕。


17Fに到着した僕は意気揚々としているのもそのはず、レベルが3程上がりレベル8となったからな。


何せ自ら敵モンスターを駆逐できる、自分で倒すから経験値が稼げる、ようやくダンジョンらしくなってきたと言っていいだろう。


今までは助っ人(NPC)頼りだったからな。今もだけど。


15F~16Fは氷上の世界と言ったモチーフになっているのだろうなんて思いながら、光り輝くフロアを一周して、落ちているものは拾い、敵を倒しといったところである。


故たかしが教えてくれたドーベルWANさえ警戒しとけば、とりあえず危険に陥ることはない。


天使にも階層ごとにアドバイスを貰いつつ、慎重かつ大胆に登れてきている。


 ただ、今先ほど不穏なSEが部屋中を駆け巡ったことはお伝えしておかなければならない。


僕の足元の升目には忌まわしき罠が姿を現している。


「即効罠ではないみたいね。状況に変化も見受けられない」


天使が冷静に状況を中継している。


「あの100升目以内に階段登らないとフロア崩壊するのとかじゃないですかね」


僕がたかしと共にした、あの階層のことを思い出しつつ言うと


「とりあえず、現状把握の書をみてごらんなさいよ。何かしらの変化が垣間見えるかもしれないから」


言われた通り、筒から取り出す



[レベル:5 17F

空腹度:残り5Fほど限り

仲間の生存数:1

仲間の能力:天使の助っ人☆☆☆☆☆☆☆

武器の強さ:中-2

防具の強さ:低い 

仲間による追加防御補正あり

運命力:自分次第    

敵との遭遇率:高

罠の設置状況:低    

以下略           ]



一見してまず、助っ人が代わったことが一目に瞭然とした。


仲間による追加防御補正ってのが天使の効果か。ありがたい。


で、天使が言ったとやらは・・・


     敵との遭遇率:高


あれ・・・ 敵遭遇率って低じゃなかったっけ。気のせいかな・・・



ってそんなわけないだろう。現実を直視すれば 低が高になっている。


それだけでは漠然としていて、現実は今いる部屋。。。


罠を踏んだ瞬間から一歩も動かずいるのだけど、今この瞬間から敵モンスターがと待ってましたとばかりに、放出されるのか。


そんな想像をしていると冷や汗が出てきた。


 天使に現状把握の書に現われた残念な罠による結果を報告をすると


「高なんて本来は初期設定でなっている冒険者が半々くらいいるわよ。これからが本番だと思えばいいわ。噛みごたえがあるダンジョンになってきたわね」


相変わらず他人事の助っ人だなあ。


いや考えを変えれば、天使は僕を励ましてくれているのかもしれない。


うん、きっとそうだ。


_______________________________



忍び足で升目を進む。


罠の追加効果は1事象に限られるらしいので、フロアが崩壊する罠である心配は消えたけど、それ以上に敵出現率高に対する懸念が脳内を占領していた。


結果はすぐに現れた。


この階に到着して5つ目の部屋 ドーベルワン6匹・・・


故たかしいわく、部屋に足を踏み入れたターンに一斉に攻撃を受けて、断末魔を利かせる間もなく昇天するという。恐ろしいワンちゃんだ。


即決で引き返し別ルートを模索することに。


迂回ルートで別部屋を廻る。


通路ではパチンコ鼠や人面蜘蛛と遭遇したが彼らは部屋内でなければ遠方特殊攻撃は使えないため、意図も簡単に斬殺できた。


1つまた1つと部屋を乗り越えていく。


8つ目の部屋を覗く。


今まで見たことのない敵モンスターだな。


その姿かたちを背後にいる天使に説明すると


「それ亡霊ね。ダンジョンで惜しくも亡くなった冒険者の御霊が宿っているのよ」


亡霊は半透明で上半身と思しき姿が見える、前かがみになっている。


「試しのカレン話しかけてごらんよ、言葉を返してくれることがあるんだよね」


言葉を返してくれる。幽霊と会話ができるのか。


よおし。


「あの。僕、カレンって言うんですけど貴方は?」


亡霊から返事はない。こちらを上目づかいで睨みつけてくる。


「どうやら、死んで結構経つ亡霊みたいね。死んだ直近の冒険者の御霊なら、まだ人としての言葉とかが使えたりする場合もあるんだよね。早く倒して成仏させてあげましょう」


天使の言うところ、亡霊は倒すことによって成仏させることができるらしい。宗教的なことではあるが成仏させてあげる仕様になっている以上僕は亡霊を倒してあげるしかない。


部屋に入ると亡霊と隣接する。


幽霊をカタナ出来れるのかという疑問が生じた。形ないもの切っても空振りだからな。


しかし、疑問は不要だった。先制攻撃すると、一撃では死ななく、返しの攻撃があった。今の僕にとっちゃ些細な攻撃に過ぎなかった。


僕は二発目渾身の振りを見せる。


目の前の亡霊が部屋天井に吸い込まれるように煙りと化した。


あまりに一瞬のことだったがスローモーションで目に焼きついた。


「これで、彼は来世に身を委ねることになるのよ。輪廻転生ね」


天使が言う。


「僕は彼を倒してよかったのかな」


「当り前じゃない。こんな、モンスターが彷徨うフロアに佇んでいたい人なんていないわよ。貴方は彼を救ってあげたのよ」


少し安心した。


僕は当時に幽霊にならずにここから脱出する、すなわちクリアすることを肝に銘じた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る