第16話 嗚呼 <異境の序曲>
足を余らせてダンジョンをクリアできる概算が覆された今この頃13Fの光景は薄暗い。
いや、通常部屋であることは変わらない。いわば、心の持ちようの変化だろう。
僕はテンションが下がっているのだ。
原因はたかしの回想話を聞いたからである。死んだら戻れない。一世一代にして一発勝負のこのダンジョン。成敗で 天と地。
不安を抱えながらも、部屋を巡ることにする。
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一行は通路を隔てて、次の部屋に入る。
幸いなことに敵モンスター出現率とやらが低いおかげでモンスターはいない。
部屋に池があったので水撃銃の燃料を補給する。
「これは薬草だな」
端っこの方に向かっていたたかしが薬草を拾ったらしい。
薬草と言うから状態異常とかを回復することができるのだろう。
たかしの能力値を戻すことはできないのかな。と尋ねる。
「無理無理。序盤のコウモリが放った混乱とかうんこ野郎のめくら攻撃とかに対処できる。あくまで状態異常専用だ」
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部屋も巡る。
ドーベルワンがいる部屋があったが見ないふりで踵を返す。
仮にドーベルワンがいる部屋を通らなければいけない状況になったら、万事休すだろう。
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9つの目の部屋に足を踏み入れる。
部屋には羽ライオンが一匹いる。
この階層ドーベルワンを除いて初めての敵モンスターだ。
ドーベルワンは特性で自らの部屋に
後戻りはできないし戦うことになるのだが。
「こいつはlv3だ。羽ライオンの中でも攻撃力に特化されている。追加効果に『埋葬』というのがある。いわば『一撃必殺』即死攻撃だ」
は?何で羽ライオンとかいうボーナスモンスターがレベルが上がるだけで鬼畜レベルになるとは、バカなのかこれは。
しかし、横暴な台詞を吐いたところで、羽ライオンは避けられない。ここはたかしに何とかしてもらおう。
「俺が部屋の端にこいつを誘導するから、カレンは水撃銃で打点を食らわしてくれ、少しでもダメージを与えられれば俺の負担が減るからな」
言われた通り、僕はたかしの指示のもと部屋に入る。
直近のプレイヤーに近づく羽ライオンは先に入った、たかしに近づいていく。
僕は奥の通路の方に行く。
丁度、たかしと羽ライオンlv3が対面する。
僕が水撃銃にて、攻撃。
羽ライオンは壁際まで飛ばされる。
この際に微々としてダメージが加わる。
これだけでは燃料が切れてしまう。
先ほどの池で燃料を補給すればいいかと思うが、池の場合川や海と違い、一度その池で燃料を補給すれば、池の水は枯れてしまうという仕様らしく、補給できない。
故にたかしは対面で攻撃を加えなければならない。
たかしが対面で攻撃すれば対面の羽ライオンが返しの攻撃を加えることになる、追加効果『埋葬』が発動すれば、お陀仏であるらしい。やれやれ。
たかしは羽ライオンに対面すると鋭い動作で翼を打ちつける。
羽ライオンは返し、いつも以上の牙を剥けると恍惚とした表情になり、たかしをむしり取るように
僕が水撃銃で壁際に飛ばし、羽ライオンとたかし隣接、攻撃の応酬。
このサイクルを3回続けた。
状況は打破できない。耐久がかなり高いとみられる羽ライオンlv3。
僕の目算では後一発たかしがやれば倒せると踏んだ。なぜかって?ダンジョンで培ってきた感だよ。シックスセンスだ。
たかしは翼でとどめを打つように放つ。
死なない。後一発かな?
返しの羽ライオン。
ん?
ここ三回の攻撃に入る際のアクションと微妙に異なるSEが流れる
「グォオオオオン。シャッシャッシャ」
突然、宙に舞い始めた羽ライオンは羽を分身させたかと思うと、その羽がどんどん倍増する。
しかも、羽はものすごい、ときんときんのまるでナイフの刃のように研ぎ澄まされた様子でたかしの真上正面周囲を覆うと、とてつもない、爆音とともにたかしを襲った。
「たかしいいい。おい」
羽ライオンの攻撃が終わった時にはたかしは消失していた。
たかしは死んだのだ。
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僕は羽ライオンに追われながら次の部屋に逃げるように目指す。
次の部屋には階段なし。
通路を足を引きずるように進む。
一人になって。もう駄目だ。たかし。。。。
俺は頭が真っ白な状況で何とか、螺旋階段に辿り着く。
たかしが死んだ事実は受け入れられない。しかし、判然とした事実なのだった。
僕はたかしを見殺しにしたのか?実際あの一撃必殺は何%くらいなのだろう。たかしの余裕加減から相当低かったのではないかと見れる。きっと今までにたかしは羽ライオンlv3と何度も対峙してきただろうが、初めて追加効果を引き当ててしまったのではないか、そんな気がしてならない。
六升後方には羽ライオンlv3もいる。
次階層から敵に遭遇すれば、独り身ではどうしようもない。
あれを読むしかないな。『助っ人召喚の書』
筒を開け、書を取りだす。
確か、助っ人は一匹(一人)までしか、そのフロア上に存在できないってたかしが言っていたが、ここで書を読めば即効助っ人が出てくる。
☆7つの助っ人。頼む最後の駒なんだ。
『助っ人召喚したければ、以下の文を読み上げなさい。有効回数1回
[いでよ神の化身よ。今この姿をご覧になりたいぞよ] ※言い間違えると有効回数を1消費します。注意してください』
久々に読むな。俗っぽい文章を僕は丁寧に読み上げる。
目の前に煙幕が撒かれたように煙る次の瞬間、助っ人が姿を現した。
こ、これは、
「天使だ、ミカエルだ」
目の前には天使と言って相違ない、背面から羽が生えた、美少女が爆誕したのだ。
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