第15話 <異境の序曲>懐古する鳥類
11Fで部屋を抜け出した僕たちは螺旋階段のある部屋に行きつくと部屋に落ちていて『書』を拾うと、そそくさに階段を上った。
辿りついた部屋には、運よく階段があった。即上りかなこれは。
「残念なお知らせがある」
残念。たかしは憮然とした態度で
「蜘蛛の糸の攻撃のせいで多分いや確実に能力値が格段に落ちた。あいつの特殊攻撃は永続的なものだったらしい」
たかし弱体化である。
「え。どのくらいのレベルで?」
「まず移動がお前と同じ1マスになった。いままでの機動性のある行動はとれない。そして攻撃力防御力も落ちている。知力も落ちているかもしれない」
かなり僕たちにとって痛いことが起きたのではないか。
「それはやむ負えないよたかし。元気出してくれよ」
「俺は大丈夫だ。死んでもまたダンジョンに別プレイヤーが召喚してくれればいい。しかしお前にゃ死なれるわけにはいかない助っ人としてのプライドがある。もう死なせたくないんだよ」
たかしは悲壮に溢れているようだ。過去につらい経験でもあったのだろうか。
「たかしは今までどんな風にダンジョンで戦ってきたの」
「教えてやるよ。俺のダンジョン人生をな」
たかしは語り始めた。
「最初に僕が呼ばれたのはルイスとかいう、青年だったな。横暴な言葉遣いが印象的なくせに、階層が進むにつれて敵が強くなる。すると彼は僕に頼りっぱなし、すごい強がっているけど、ダンジョンに畏怖していることは一目瞭然だったな。17Fくらいで怪物集合体に遭遇して。勝手に右往左往し始めるものだから、あっけなくモンスターに囲まれて、死亡したよ。主人公が死んだ瞬間、俺もそのダンジョンから消失したな。
それから、色々な冒険者に呼ばれては、得意技の2連続行動を褒められ、頼られもしたな。
次に香月っておじさんはかなり印象に残っている。香月は常に冷静沈着で判断力がよく、このダンジョンに来てしまった理由なんてどうでもいい様子だった。
香月は「突発的な出来事に対応できない奴は社会で通用しない」とモンスターを討伐した後に口台詞のように言っていたよ。
そのおじさんはかなり時間を掛けて、20何Fか忘れたけど。フロア崩壊の罠で100升以内に階段に登れず、逝去なされたね。
俺たちには人間がよく言う、[こんなに時間たった]とか[もう○○Fか]なんてことが理解できていない。升目升目。どのようなルートを歩んできたかは理解できているけど、時間なんてものは分からないんだ。プレイヤーが口をそろえて言う時間っていうのはこの世界で言う升目のことだと気付いたのはずいぶん後になってからだったな。
そして、今俺は能力が格段に落ちたって云ったな? かなり召喚されてきたわけだから、自らの能力が著しく落ちた、召喚事例は結構あるんだ。
嵯峨山という女性はOLとかなんだとか言っていたな。甲高い声で聴覚が変になるかと思っていた。今までのプレイヤーとは違いかなりの変わり者って言えばいいのか、3Fくらいになると「もう疲れちゃった。羽で方向指してGOでも進めでも唱えてくれたら進むから。もうしゃべらないわ」と言い放つと、20Fくらいまで無事に進んだ。ただ俺がモンスターにステータスを下げられると、完全に彼女は行動不能になった。なにせ俺の知性が ZERO になったわけだから。俺は敵モンスターの如く主人公に攻撃を加えたりしたな。当時は知性皆無でも今は当時の記憶が鮮明に蘇る。 彼女は最後阿鼻叫喚して、天に召されたね。
結構序盤で召喚された話をしたよお前のためにな。
参考になったか?」
僕は首肯した。にしても苦しい話だった。
「ちなみになカレンここにもあるが、ほら、地面を見てみろ」
言われた通り、地面を見る。
[OTA,SOHEI 1999 11 25 餓死]
「今までも、ところどころ升目を見れば書いてあったんだがな。その升目の上で天に召されたんだろうOTAさんは」
「どゆこと?」
ここって何なんだよ。僕は家に帰るんだ。また、プロ野球を見に行くんだ。なのにさっきから逝去した話や天に召された話。ってどっちも死亡じゃねえかって話聞かされるんだ。そもそもここは幻影。何かに操られて見えているだけじゃないのか。 たかしに問うも。
「俺もお前ら冒険者の倒れて以降のことは知らないが、助っ人同士の待機所みたいなところで噂になるんだよ。死んだ主人公は呪縛霊になるんじゃないかって」
「は?霊とかそんなの存在しないでしょ・・・」
「今は出ないが15F以降、亡霊っていう、知性を持つモンスターが30Fまで出現する。人の言葉をしゃべったり、行動も人間には劣るが知性を使うため、厄介なんだよ。だから亡霊たるモンスターはもしかしたら死んだ冒険者たちが残した魂を受け継いでるんじゃないかってね」
死んだら、このダンジョンで一生彷徨うことになる何って絶対嫌だよ。
________________________________
1升目進行となったたかしを1間隔開けて歩かせ、歩を進める。にしてもどのレベルで能力が落ちたとか、数値とか実際戦ってみないと分からないけど、前の階層の人面蜘蛛は一発で倒せてたのは瀕死状態に近かったからなのか。
あれこれ考えていると螺旋階段についた。
「現状把握の書でも確認しておこうぜ」
たかしが勧めるので、久々に書を開く。
字がかなり薄くなっていたので、刀の刃で指を擦って、書に血を垂らす。
[レベル:5
空腹度:残り3Fほど限り
仲間の生存数:1
仲間の能力:鷹の助っ人☆☆☆★★
武器の強さ:中-2
防具の強さ:低い
運命力:自分次第
敵との遭遇率:低
罠の設置状況:低
以下略 ]
「ああ俺☆3つに落ちてる、陰っている星マークは、能力ダウンを示してる」
やはりたかしの能力は下がっていたか。この書に狂いはないとすると、僕のレベルは5のままか。防具の強さが低いってのも、なかった時に比べれば、マシなんだろうけど・・・。敵との遭遇率が低いってのも頷ける。実際、通路で全然敵と遭遇しないからな。
僕らは先ほどのフロアで拾った書の中身を階段を上がる前に確認する。
[#$*%$#*+>‘{‘+}{‘*}{L‘+‘{}>}]
支離滅裂な記号が羅列してある、理解不能とか言いようがない。
「理解できないけど、たかし読める?」
「基本的に助っ人は冒険者と同じ言語を理解しているから当然カレンに読めないのなら俺も読めない。読めない書ってのは-効果の者物の+効果のもあるから、本当に賭博なんだよ。本当に危機的な状況で身を捨てるが如く読むものだよこの書は」
とりあえず、所持ということで。持っておく分にはデメリットはないからな。
僕たちは空腹度を早めに埋めておこうということで、おっきなキノコを食べる。
味などは感じないがこれで10階層ほどは腹を気にせずに済む。
いつも以上に階段に踏み入るのに時間がかかった、足が重くて重くて。ね。
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