第14話 11F 能力減産

どうなる事かと思ったよ。本当に。僕たちは11Fにやっとの思いで辿りついたわけである。


「ここから15Fまではちょっと厄介な挙動をするモンスターが出現するから、1升目1升目慎重に行動する必要があるからな」


「厄介な挙動とは」


「たとえば『元気系イノシシ』だとか『番犬 ドーベルワン』とかだな。両者共に1ターンに複数升目の移動が可能だ。色々動き方が異なるけどな」


 確かに厄介そうではあるな。


「とりあえずたかし。このままどんどん進んでいったほうがいいのかな」


「お前のレベル上げは無理だろ。なんせ、せみの抜け殻防具だからな。ここら辺のモンスターなら確定一発。運良くても二発だ。俺ありきの冒険になる以上、アイテムを拾いつつ、即上りという形は継続だ」


「わかった!」



 たかしと僕はフロアを散策する。


通常フロアと言うことで、黄土色の壁面地面。 岩がところどころ升目を埋めている。


四部屋目に侵入する。 


「いたよいたよ。ドーベルワンが」


たかしが言うので、通路から部屋を見ると、でっかい犬がいた。3匹くらいか。


非常に獰猛そうなご様子で、舌を出し、こちらを睨んでいる。


今にも襲いかかってきそうな、野蛮さを感じる。


「この部屋には入れない」


「え?たかしの攻撃なら倒せるんじゃないの」


「一匹なら余裕だ。だがしかし。こいつらは5匹いる部屋に。それが何を意味するか分かるか?」


意外といるな


「意味?僕らに比べれば数が多い。数では負けてるけど・・・」


「こいつらのモンスターとしての特殊能力はだ。群れになると、ドーベルワンは攻撃力が格段に上昇する」


「それは危険だね」


僕は平然と答えたが、僕は手汗が出そうだよ。


「それだけではない。ドーベルワンはその部屋に永久にとどまる。この部屋を④とすると、④の部屋には永久にこの犬どもがいるんだ。つまり、ドーベルワンはこの部屋からは出られない。よって追ってくることはない」


「迂回ルートを使うしかないねそれなら」


「そうなんだよ」と言いたかしはドーベルワンの説明を続ける


「ドーベルワン特殊能力その2についても言っとかなければならない。俺たちがその部屋に入った瞬間、ドーベルワンはすべての升目から俺たちに隣接して移動することが可能だ。俺たちは今通路と部屋の境目の升目にいるから、あいつらは部屋に散らばっているが、俺が一歩でも踏み込んだ暁には、領土侵犯とみなしたドーベルワンが五匹いきなり隣接してきて、五発の攻撃を受け、俺はこのダンジョン生活にピリオドを打つはめになる」


僕たちはやむを得ず、回り道を行く。


部屋部屋の入り口で中をたかしが念入りに確認しては進む。



アイテムが落ちている部屋があったが、カタナの劣化と思しき、竹刀だったので拾わなかった。


今回は中々部屋が多いな。 13個目の部屋をたかしが覗く。


「いやなのいるねえ。パチンコ鼠と人面蜘蛛lv2だよ。両方遠方攻撃してくる。ちょうど入口升目が斜めの軸になっている二匹共の」


「だけど、ここを通らないと、後は戻って、あの犬どもがいる部屋からしか…」


「当然ここから行くことになるだろうな。とりあえず、遠方攻撃されないように。入口一歩前の升目に行こうとするよ。この部屋ではたかしの援助も必要になる。俺が捨て身になっていいなら一人で行くけど、来れるか?」


僕はたかしが全部やってくれると内心思っていたので、一緒に戦うかと言われて異常なまでの驚愕に襲われる。


だが当然答えは、「あたりまえじゃないか。はは。僕が主人公なんだ」



土土土川川川川川川土土土

土土土土土土土土土土土土

蜘土土土土土土土土土蜘土

土土土土土土土土土土土土

土土土土土土土土土土土土

土土土土土土土土土土土土

土土土土土鷹土土土土土土

土土土土土土土土土土土土

     ⑫


たかしがまず乗り込んだ。僕は入口一歩前で状況をうかがう。人面蜘蛛にパチンコ鼠か面倒な配置にモンスター置くよな本当に。


部屋は奥に川が流れている以外漠然とした部屋だ。


僕が行動しない限りこの世界のモンスターおよび助っ人は行動できないので、僕はその場に居座るコマンドを選択することになる。そのコマンドとやらは思念すればいいだけの作業である。


するとパチンコ鼠と人面蜘蛛は斜めに最短ルートで一マス進む。


たかしは次に左斜め二升進む。


敵モンスターは横一直線になるように斜めに降りて来る。


そうか、連続移動系以外は隣接しても攻撃できないんだったな。だから今たかしと人面蜘蛛が隣接しているけど、攻撃されなかったわけか。


しかし、ハサミ将棋のように右にはパチンコ鼠がいる、左には不気味な人面蜘蛛が笑顔を浮かべる。


たかしは桂馬の動きで右上に行く。


左の人面蜘蛛は左下に、右の右の鼠は5升程の一マス下のラインにいる。


「よし。カレン。部屋に入れ。俺の言うとおりにしていれば攻撃されることはあるまい」


部屋に入るとやはり緊張感があるな、同時に二度たかしは隣接する斜め下の、ウキウキ模様の人面蜘蛛を華麗な羽さばきで攻撃する。


しかし、二発の攻撃では倒せないようで。人面蜘蛛はものすごい量の糸を発射したかと思うと、たかしの足元を真っ白にした。


右上のパチンコ鼠はたかしの直線状の横ラインに移動した。


「まずいカレン。糸吐きで鈍足になったかも知れん。2升移動からお前らと同じ、一マスしか移動できない。正直二発で倒そうと思っていたが」


「ええどうするのよ」


「パチンコ鼠の石攻撃は苦手としているから無理だ」


たかしは思案しているらしく黙り込んでいたが。状況を打破するアイディアが浮かんだげな表情で


「水撃銃でパチンコ鼠を落とせばいいじゃないか、何で思いつかなかったんだろう馬鹿馬鹿しい」


僕がその升に居座り、たかしが上に移動。人面蜘蛛は右上に。そして、パチンコ鼠は左上に。共にモンスターはたかしの斜め両サイドに隣接した形だ。



土土土川川川川川川土土土

土土土土鷹土土土土土土土

土土土蜘土鼠土土土土土土

土土土土土土土土土土土土

土土土土土土土土土土土土

土土土土土土土土土土土土

土土土土土土土土土土土土

土土土土土僕土土土土土土

     ⑫


僕は水撃銃で忌まわしき、鼠を駆除した。


チューンという悲鳴とともに鼠は溺死したようだ。やれやれ。


たかしの一撃で人面蜘蛛も退治。試合終了!


この部屋は我々の物だ!








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