第13話 10F 大海原にて

10F。きりの良い数字だな。30Fまで3分の1だ。まだ3分の2あるのかと同時に思うと、気疲れしてしまう。


10Fの光景は今までとは様変わりしている。


遥か彼方が見渡せる。


足場となる地面は砂浜のようで、升目の外は波立つ海である。


「これが海フロアや。低確率引いたな」


これが聞いていた、海か。


かなり好都合なフロアじゃないか。


すべての部屋が現在地が見渡せる。当然壁があるフロアではありえなかったことだがこのフロアでは壁がないからすべての部屋が。。。というか部屋と言うより島と言った方がいいのかな、なんせ海に浮いているわけだからな。まあ、今まで通り部屋という名称でいくとして、部屋が丸見えなのだ、ぱっとかぞえて12部屋ある、モンスターらしきのも散在している。


「おそれていた事態が訪れたよカレン」


たかしが唐突に言いだした。毅然としたもの言いは冗談を云うものではない。


「まさか、増殖系だっけ?そいつらがいるのかい?」


「あそこを見てみろ」


言われた通りにたかしの翼が差す方角を見る。


「・・・洋式便所?」


見るからに真っ白な様式便器が遠方の部屋に置いてある。蓋は開いていて男性が小便をするポジションであった。


「無限増殖系には2種類いるんだが?こいつは『うんこ製造便器ちゃん』だ」


なんて煩わしい名前なんだ。あの忌まわしきうんこ野郎を製造することは名前ではっきりする。


「どうすればいいのかな」


「幸い。カレンの持っている螺旋階段移動の書が最終カードとして残っているがが・・・階段のある部屋にそいつがいる。海のステージでは端から、端まで、水撃銃の弾が届く。うまく水撃銃のふっ飛ばし効果でうんこを海に消失させながら行こう」


「うんこ製造っていうけど、どれくらいの頻度でうんこ野郎は放たれるんだい」


「完全に不定期ではある、1ターン。につき10%とかだった気がするが忘れちまったな。もっと多いからしれん。

放たれるうんこはお前を盲目にしたうんこ野郎も含まれる。もっとも強い『地雷うんこ野郎』に当たるのは一番厄介だがな」


「地雷?」


「放たれた地雷うんこ野郎は升目に埋め込まれる。当然擬態しているから、主人公には一見、通常の地面だが、踏んだ瞬間HPは1になり、そのフロアでは回復しない。自然回復しないんだよ。死に近づくことは間違いないだろう」


いろいろうんこ野郎についてたかしに教えてもらったが、ようするに早く上に上がれってことだな。


部屋を僕たちは橋を渡って移動する。


チュートリアルの時もいたうんこ野郎lv1は僕が率先して二匹倒した。


2つ目の部屋には僕を盲目にさせたうんこ野郎がまためくらにしてやろうか風情でたたずんでいたが、たかしの二連続攻撃の後僕が一撃を食らわせた。



「SUPON」


2つ目の部屋から橋に渡り、3つ目の部屋に向かう。螺旋階段まであと3部屋のところで、便器がおちゃらけた音を鳴らしたかと思うと。


便


「わからないことも多いと毎回感じるが。俺見たことない。便器が分裂するなんてな~」


 感心するようにたかしは言うが、これはつまり。うんこが二倍放たれることになったわけであって。


とりあえず、3つ目の部屋に辿り着く。


「はは。やばいことになってるな」


たしかが言うとおりこれはやばい。というかまずい。


3つ先の部屋にはすべての升目にうんこが詰まっている状態で橋を渡り、僕たちが目指す4、5つ目の部屋に迫っていた。


螺旋階段のある3つ先の部屋ではうんこが漸次製造されている。



※フロアの見取り図

○に数字は部屋

=║∥は橋



  ⑫=  ⑪  =  ⑩ 

   ║        ∥

   ⑨       ⑦

   ║        ║

   ⑧       ⑥

   ║        ║

①= ②= ③= ④ =⑤



僕はたかしと地面の砂浜に指でフロアの全容を描き、方策を練った。


現在地が③で⑤ ⑥の部屋にはうんこだらけ。⑦で生み出されるうんこは⑩の方向から逆時計回りで僕たちの方向を目指す。


「どうするたかし。ここで一生過ごすか」

まさかとたかしは言い


「海と言うことで水撃銃の燃料はいつでも補給できる。壁もないからとりあえずここから、水撃しようカレン。俺は⑤まで行って一匹ずつ倒していく。この作戦なら フロア上で うんこが製造される数<うんこを消滅する数 になるから。うんこでフロアが埋め尽くされることはない」


「やるしかないね」


僕らは、うんこ殲滅作戦を今実施する。


_______________________


僕は③の部屋上部から、水撃銃を構えると斜め方向⑥の部屋の上に架かる橋に向けて水撃を開始する、橋にはうんこ野郎各種類が跳ねているが、水撃により呆気なく、水に身が投げられる。


PONPON打っている僕をよそにして、たかしは⑤の部屋にて⑥の部屋から来た、うんこ野郎を得意の1ターン二行動攻撃を駆使し、倒してゆく。


ちなみに水撃での攻撃で海にうんこ野郎を落としてもなぜだか経験値にはならないようで、レベルは上がらなかった。


たかしは時計回りに歩を進める。逆時計回りで進行してくる敵を倒すためだ。


僕は相変わらず、絶え間なく製造されるうんこを⑥上部の橋で遮る。


ターンが経つにつれ、うんこ野郎はだんだん無くなっていく。


そして、

たかしが⑩の部屋に辿りついて、こちらに向かってくるようボディーランゲージを発したので。時計回りで⑩の部屋に赴く。


⑦の螺旋階段のある部屋に2つの便器が鎮座している。不動である。


水撃銃で打っても見たが不動だにしない。


「たかし。この便器って攻撃してくるのか」


「知らん。そもそもこいつらとまともに戦った冒険者なんていないからな」


「スルーして。階段降りればいいのでは」


「それしかなさそうだな」


僕らは覚悟を決めて⑩の橋から⑦の部屋へといざなう。



※便は『うんこ製造便器ちゃん』の略

※ ~は螺旋階段の略


  海海海橋海海海海

  海砂砂僕鷹砂砂海

  海砂砂砂砂砂砂海

  海砂砂砂砂砂砂海

  海砂便砂便砂砂海

  海砂砂砂~砂砂海

  海砂砂砂砂砂砂海 

  海海海橋海海海海


⑦の部屋に降りたときにもうんこ野郎は製造されていたがたかしが倒してくれる。


「よし。通るか。失礼しますね便器さん」


カチャ。プオーン ドカーン。


部屋全体が真っ赤に染まったかと思うと、尋常ない熱さに死を感じた。


「なんだこれ」


「地雷うんこやろうに掛かったな」


数秒後目を開けると、便器二匹が消失していた。


あっけなさに呆然としてしまう僕ら。


便器野郎もみじめだな、自らが製造した地雷がまさか、自らの隣接升目に埋め込まれるとはな。身から出た錆だな。


「何はともあれ。上に上るとするか」


たかしが促し、僕は階段へ進む。

地雷うんこ野郎に引っかかると主人公および助っ人はHP自然回復がそのフロアでできなくなる。HPは1で敵に一発でも食らった死ぬからな。


地雷を踏んだ時はどうなるかと思ったけど、事なきを得た。ってことで。


無限増殖系モンスターエリア突破だ。


HP1の僕たちは慎重に忍び足で螺旋階段へ歩を進める。

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