第9話 <異境の序曲> 通過点

4Fに降り立つ。通常マップのようだが、やや小ぶりの部屋である。


縦9×横8程。


フロア到着冒頭だが、いきなり2升程前に筒が落ちている。


手慣れたもので、4Fともなるとフロアに着いた瞬間に升目を動いている僕。


「なになに。『螺旋階段前移動の書』だと」


「お前。これはすごいことだぞ」


たかしが驚愕の顔をしている


「上の方とか言って。怪物集合体モンスターアグリゲーツとかに遭った時、助かる確率が高くなる」


「たかし。なんだよ怪物集合体って」


「ああ、お前にはまだ言ってなかったな。カレンは運に恵まれているが、悪運にも恵まれる自信があるなら警戒しておいた方がいい。怪物集合体ってのはな、1フロアが1部屋となり。その部屋に大量のモンスターが配置されている、挑戦者殺しのフロアさ。俺を要したって中々突破は厳しいぜ」


大量のモンスター。。。考えるだけでも恐ろしすぎる。


「まあ。1フロア当たりの怪物の集合体出現率は1%といったところだろう。あまり神経質にならなくてもいいぞ。来たときは何とかなるさ。半々くらいで」


半々って頼りない数字だな。


長居すると崩壊するフロア。怪物集合体。


僕一人ではどうにもならないな。


たかしがいても、心もとない部分がある。


そういや、レベルってのがあったな。レベルを上げれば、僕自身が強くなり、モンスターをぼこぼこにできる。 とたかしに尋ねたところ。


「それは無理な話だ。今のカレンのレベル。把握の書で見てみろ」


レベル3。上がってない。。。


「お前は敵モンスターを倒していない。たとえ助っ人の俺が倒したところで、経験値はお前に還元はしない。俺にも還らない。俺にレベルってのはないからな。能力が上限の状態で送られてきている」


「今から。。。たとえば。たかしが出現するモンスターに致命傷を与えて、僕が仕留めるってのはどう?そうすれば、レベルアップも楽じゃない?」


たかしはうむっといった表情で


「まあ、この階と5Fでレベル5くらいにはできるかもな。ただしお前は耐久が低い。この階から『人面蜘蛛』とかも出て来るが、そいつらにかかればお前はだ。もちろん羽ライオンもな」


「後先のこと考えたら早めにケアしておいた方がリスクにならない。低リスクを取って、高リスクを回避する!」


 僕はたかしの協力のもと、レベル上げを開始した。


____________________________________


たかしのおかげでどんどん出てくる羽ライオンやらコウモリらを倒してゆく。


淡々とした作業のように見えるが、僕は羽ライオンに対しては確定二発で倒される耐久である。


コウモリの嵌め戦法にでもかかったら大変だ。


だがレア有能我らがたかしは賢明な升目選択で悠々と相手にダメージを与えた状態で僕にバトンタッチしてくれる。


僕はレベル5になることは簡単なことだった。


____________________________________


「お。川あるじゃん。この部屋」


たかしが目配せする方向には、一直線に横切る、小川があった。いや用水にも見える。形が長方形で流れも感じられないが、水面が部屋の黄土色を反射させている。



土川川川川川川川川

土土土土土土土土土

土土土土土土土土土

土土土土土土土土土

土土土土土土土土土土

土土土土土土土鷹僕④

土土土土土土土土土土

土土土土土土土土土

土土土土土土土土土

土土土土土土土土土



「池があるのはもう見たけど、川もあるんだね」


「おう。海ってのもあるらしいぞ。一面海だ歩行できない、難解なフロアだな」


「へえ。いろんなフロアがあって見ている分には飽きないね。景観は」


たかしは指をさす。


「おい水撃銃の燃料補給していこうぜ。何のための川なんだ、試すほかないぜ」


そうそう水撃銃なんて拾ったな。


川の方向に進み、川に面する。


銃から銃倉部分(書道の授業の時に使った墨汁を入れておくやつに似ている)を外し、キャップのようなものめくり取り、川に沈ませた。


「これでいいかな」


「いいだろう」


満タンにあふれるまで水を注いだ、キャップを締め、銃に装填する。


「試射してみようぜ。丁度手頃そうなキノコ君が今回の晩餐になってくれそうだ。このフロアでは低確率の出現率なのにな、こいつになるとは、このキノコ運がねえな」


僕のいる直線上には『魑魅魍魎キノコ』がこちらを見そびえる。


銃口をキノコに向ける、引き金を引く動作に入り。念には念にキノコに照準があっているか確認。


「PON」


可笑し気なゲームSEとも思しき破裂音がさく裂・・・というか響いた。


「死んでないやないか。弱いなその武器・・・いや。あいつ吹っ飛んだな。この武器の本来の目的は相手を一直線にぶっ飛ばすことなのかもしれん」


確かに僕が銃弾を放つ前にいた場所からもっとも後ろの壁まで飛ばされていた(そこから現在は相手のターンでキノコは一歩進んでいるが)


「有用かなこれ」


「使い方によっちゃ有用やな。重宝していくしかないな」


『魑魅魍魎キノコ』は残り一発で倒せるとの聞き、僕が刀で切った。またしてもキノコが落下し、たかしは何とも言えない感情を浮かべた。



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