第8話 <異境の序曲> 心強い存在 その2
羽ライオンに殺されかけた僕はその場で憔悴しきっていた。
「こんなところでへばってちゃ、上に行った後どうしよーもならんぞ」
たかしが厳しい言葉を投げかけて来るが、
ライオンを一刀両断しまくった、たかしは威風堂々として見える。
「このあとどうしたらいいんだろう。耐久がなさすぎるよ僕」
思わず弱音をこぼしてしまった。
「カレンとりあえず目先のこと考えよう。HPは時間がたてば回復する。ダンジョンの基本だ。お前が今心配すべきは空腹度だ。耐久なんて二の次だよ、俺についてこれば低層の敵なんてちょろいもんだぜ」
たかしがいなかったら僕は低層であえなく撃沈していたことを確信した。
僕たちは通路に出て部屋を巡り辿った。
通常フロアだったようで、各部屋ぼちぼちモンスターがいて、たかしがお得意2升進行で倒しに行く。
「あれが『魑魅魍魎キノコ』だな」
ある部屋で現れたのは、毒毒しい色彩を放つ。キノコである。
こんな奴から採れるキノコ食べて、大丈夫だとは到底思えない。
「大丈夫だカレン。こいつから採れるキノコとはいっても、こいつを食うわけではない。こいつを倒したことによって、発生するのキノコであって。こいつはこいつ。キノコはキノコだ。じゃがいもの根に毒があったって、じゃがいも自体は食えるだろ。そんなところだ」
たかしは怪物を確定一発で撃破した。
「落下率30%のキノコを一回目で引いたぞ。お前つくづく運がいいな」
『魑魅魍魎キノコ』が散った升目には真っ黒なキノコが放ってある。生のキノコである。
特に空腹を感じるわけではないが、たかし曰く、この階で空腹を満たさないと死ぬとのことなので、いただくことにする。
僕はキノコを拾うと食した。
味は感じず。口に入れる動作をしただけだが、口からキノコは消えている。吸収されたんだろうか。
「それで10Fは持つはずだ。6F以降だと、キノコの採取方法がかなり、難しくなるから、この階層で6個はキノコを収集しておきたいな」
「6個?30Fまでなら3個くらいでいいんじゃないの」
「俺を入れろよカレン。助っ人だから食わないとでも思ったか。助っ人にも空腹度の概念は存在するんだよ。俺の場合倍速移動だから、2倍はほしいところだが、あまり長居はしてられない」
「別に時間なら気にしなくていいよ。いっぱいキノコ取っていったほうが安心じゃない?」
「時間とかじゃねえんだ。一定の升目を1フロアで歩くと。『崩落』という現象が起きるんだよ」
「崩落?」
「フロアの端から1升1升。パラパラと升目が壊れていって。最終的にはすべてが消える。あくまで噂だけどな経験したことはない」
恐ろしいことを聞いた。たしかに同じフロアに居座って。アイテムを一杯手に入れていったら、断然有利にダンジョンを進める。
まるで、用意周到を拒むような、現象だ。『崩落』とやらわ。
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僕たちは(ほとんどたかしが)キノコ狩りをした。
僕も1匹たかしが見守る中で『魑魅魍魎キノコ』と戦ったがやはりというかなんというか苦戦にした。
相変わらず、先制はするものの、確定一発では倒せず。
毒キノコの胞子攻撃にて、体に悪寒を発することとなり、結局のところ、たかしが仕留めることとなった。情けない限りである。
「薬草はないから。数ターン立てば、元気になるさ」
たかしの言った通り、悪寒は去っていった。
そして15匹ほど狩ったところで、目標の6個のキノコに有り付けた。
準備はとりあえずそろったので次の階を目指して、階段のある部屋に向かう。
途中通路で羽ライオンに遭遇した。前を歩く、たかしが一発で殺ってくれた。
その際。羽ライオンからアイテムが落とされた。
「銃やな。弾はない。見たことないから、また珍しいものかもしれないな」
たかしから手渡された銃は想像していた物とは異なり、太い形をしていた。
弾倉部分を外してみると弾を入れる物とは思えない。
「それ。水撃銃かもな」たかしが云う。
続いて
「ようは水鉄砲の強化版や。超上位互換な」
「水はどこで入れるのかな?」
「入れれるかどうかはわからんけど。各フロアに低確率で池のある部屋が登場するからそこでもしかしたら、水を補充できるかもしれん」
銃なら遠隔から攻撃できそうだから、僕が生きる場面が出てきそう。水だから強いかどうかは別として。熱湯とか出せたら強いかもしれないが、この銃に給湯機能があるかは未知数である。
てなわけで、螺旋階段へと向かう。
「ねえたかし。4Fと5Fでもキノコは狩れるのに何でこのフロアで目標の6個を一気に取ったの?」
「3Fが一番『魑魅魍魎キノコ』の出現率が多いからに決まってるだろ。4F5Fは虫けらが多い」
理路整然としている、たかしに感銘を受けている僕。
螺旋階段には僕が先頭で歩む。
助っ人は助っ人僕の一歩がたかしの二歩となる。
螺旋階段を上るのだ。
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