第7話 <異境の序曲> 心強い存在

通常の部屋は1Fぶりだ。ぶりだってのはおかしいか、まだ3Fだからな。


縦12×横9の部屋であることは数えれば明らかであったのだが。


ここで非常事態宣言。 エマージェンシーモード突入と言わせてほしい。


僕のいる8升ほど前に5匹のライオンに羽が生えた奇態な姿のモンスターがこちらを見据えている。


羽は雲のようにもくもくとしており、仙人のように顎の毛が伸びている。 


神々しさとは裏腹に恐ろしい野獣のまなざしが僕を畏怖させる。


ずるくないかこの状況。狡猾に企まれた罠じゃないか。嵌めだよ嵌め。


しかも通路が部屋には一つしかなく、羽ライオンの後方であり、通路に向かうことは困難を極めている。


僕はふと、所持していた筒のことを思い出す。


これを使う時が来た。 


いや使ったところでこの状況を乗り越えられるすべになるかなんてわからない。


とりあえず、筒から書を取りだす。



『助っ人召喚したければ、以下の文を読み上げなさい。有効回数1回

[いでよ神の化身よ。今この姿をご覧になりたいぞよ] ※言い間違えると有効回数を1消費します。注意してください』



よおおし、間違えないように一文字一句丁寧に。



「いでよかみのけしんよ。いまこのすがたをごらんになりたいぞよ」


目の前が霧中になったかと思うと、目の前の升に助っ人が現れたようだ。


見た目は二足歩行の人間かと思ったが、頭部を見ると・・・鳥類であった。


鋭い目つき、くちばしが尖がっていて、鋭い爪。


つよそう・・・


これはたかなのかわしなのか、バードウォッチャーではないので分からないが、便宜上、鷹ということにしておこう。


さてこのダンジョンに入って、コミュニケーションを取れた生物とは対面していないが、こいつなら仲間だしできるのではないか。


「よう。僕が君を召喚した。よろしく。今かなりヤバい状態なんだ。力を貸して!」


「お前運いいな。その巻物、一階層ごとに1%の確率でしか出ない出現率レアのアイテムだぜ。これ拾ってクリアできんとか聞いたことないぞ」


いきなりプレッシャー掛けてきた。てかこの助っ人召喚の書はレアだったのか。拾えるのが当り前じゃないのか。ラッキーだった・・・


「で・・・レアっていうことは君当然強いのかな?この状況打開できる?」


「俺も久々の召喚だけどよ・・・こんな低層で召喚されたことなんて久々すぎるは?あのライオンなんて低ステータスだから、俺がちょちょいのちょいしてやるよ。兎にも角にも、ちょっとおれもわくわくしてるんだぜ。なんせいつぶりだ召喚されたの?はやく倒してクリアさせてやるよ。ところでお前空腹度マズくないか?この階層でキノコ食わないと、死亡じゃないか?」


え、死亡?この階で? さっき痛い思いして、自分の状況を把握した時は後2階層は平穏無事だって書いてなかったけか。


僕は命を乞うように鷹に言った。


「どうすればいいんだい」


「何怖気づいてんだよ。キノコなんてこの階層からでてくる『魑魅魍魎ちみもうりょうキノコ』を倒せば、一体ごとに30%の確率でキノコを落としてくれる。『魑魅魍魎キノコ』が出現するのは3Fから5Fまでだから、その間に食糧を確保するのがこのダンジョンのセオリーだな」


鷹は滔々とダンジョンについての知識を吐露した。


この助っ人キャラは僕の空腹度を把握しているし、ダンジョンについても知り尽くしている模様。こんなに頼りになる助っ人どこにいるって話だね。


「じゃあ。よろしくお願いします。鷹・・・。なんて呼べばいい?」


「別になんでもいいぜ。鷹だから、安定のとか、今までの冒険者につけられたな」


「じゃあたかし!いこう!」


土土土僕土土土土土

土土土鷹土土土土土

土土土土土土土土土

土土土土土土土土土

土土土土土土土土土

土土土土土土土土土

土土土土土土土土土

土土土土土土土土土

土土土獅土土土土土

土土獅土獅土土土土

土獅土土土土土獅土

土土土土土土土土土

    ①


 ※獅はライオンの略



僕は右上に一歩動いた。


その瞬間たかしは前方に1升進んだはずだったが。


なんと2升進んでいる。


なんでだ?


「驚いたか?俺は1ターンに2升進める助っ人なんだよ。それ故、敵を圧倒できる」


たかしは僕が2歩進んだ頃にはライオンと対峙していて。僕が次の一歩を進んだ時には、一匹のライオンを粉砕していた。


弱いのか?あのライオン


向かって右側のライオンが僕の方に向かってきている。


たかしは2匹のライオンと格闘中だ。


たかしにすべて任せてられるか。このダンジョンの主人公は僕なのだ。僕の一歩がすべての始まりなんだ!


真剣勝負といこうじゃないか。打ち切って見せる。獅子奮迅ならぬ、獅子粉塵にしたる 自分でも笑ったよ


先制攻撃は僕だ。刀をさらっと振りぬく。


コウモリとは違い、確定一発はとれない。


「ぐぉおーーーん」


雄々しい叫び声とともに、口を開けたライオンは僕の胸部あたりに牙をむけた。


「おい。カレン大丈夫か」


たかしの心配そうな声が聞える。


今の攻撃は今までとは規模の違うアタックだった。


低層は余裕じゃないのかよ敵強いじゃないか。


「後一発で恐らく死ぬぞ。はずしたら。カレン。お前がお陀仏だ」


たかしは冷静に言っているが、ここで僕の攻撃が万が一ライオンを射止められなければ、僕は死ぬ。


ええ。何でこんなに僕弱いの? もしかして防具ないからとか? 信じられない


神様仏様。僕は宗教には興味はないがこの際は神が降りてくることを信じることにしてやるから何とか、この一撃がライオンにヒットすることをお許しください!


当たった。獅子は粉塵と化した。


危機一髪だった。





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