第4話 魔法書

 関所の通過して、宿に着くまでの間、ザカムに渡された魔法書を読んでいた。魔法の発動は、術式を具現化し、魔力をそこに通せばいいらしい。

 術式はムドラ文字と呼ばれる文字を様々な形に図形と共に配置したもので、これを具現化したものが魔法陣だ。

 ムドラ文字自体は日常で使われることはない文字で、一文字ずつに意味を持たず、複数文字の組み合わせで初めて意味を持ち、その組み合わせで術式となるのだ。この中で、よく使われるものには、○○ムドラと呼び名が付けられている。

 魔法の原理は研究され尽くされているが、新しい魔法の研究は意外と捗らないらしい。というのも、ムドラ文字を配置する順番を入れ替えるだけで全く違う魔法になる事も多く、失敗や再現不能、成功しても実用性の皆無な魔法となる事がほとんどなのだ。



 「さて、やってみましょうか」


 街の中で戦闘魔法は禁止されているが、この宿は商隊やその護衛を専門としていて、その護衛が訓練をするための中庭では、戦闘魔法を使用する許可が出ているらしい。標的にする為の案山子が設置してある。


 「最初の魔法…攻撃術式/ボールでいきましょう」


 魔法発動の第一段階、術式の具現化。術式のイメージを持ち、それを現す。


 「まずは術式を頭に描く、その後で具現化に持っていく……」


 攻撃魔法/ボールの術式は戦闘魔法の中では基礎中の基礎。とは言え、導魔力ムドラ,発動・形成ムドラ,射出ムドラの3つのムドラ文字の組み合わせをそれぞれ円形にして、同心円状にこの順に配列する必要がある。


 「導魔力ムドラ……発動・形成ムドラ………あぁ、ダメです。もう一度…導魔力ムドラ…発動・形成ムドラ……射出ムドラ………具現化!」


 手の前に魔法陣か現れる。


 「あとは……」


 しかし、魔力を通すより早く、魔法陣は消滅してしまう。


 「あぅぅ……、ダメでした」


 とその時、


 「魔法の練習かい?」


 声の方を向くと、1人の男が立っていた。


 「えっと……どなたでしたっけ?」

 「あ、こっちからは知ってるけど君からは知らないね。僕はアインス。君と同じ、隊の護衛士だよ」

 「あ、それは失礼な事を言っちゃいましたね。知ってるかもですけど、コンスタンシェです。アインスさんは魔法使えますか?私、よくわからなくて……」

 「そうなのかい?いい線いってたと思うよ?あそこまで出来れば後はすこしさ。導魔力ムドラと指先を意識して、そこに魔力を通すんだよ。見ててあげる」

 「はい!……導魔力ムドラ…発動・形成ムドラ…射出ムドラ……具現化!………えいっ!」


 具現化された魔法陣から、拳大の魔力の塊が飛び出す。


 「嘘だろ……マズい!援護術式/硬化!」


 案山子の下に魔法陣が現れる。直後、ボールの魔力塊がぶつかる。爆発と共に、案山子も魔力塊も無くなった。




アインスさんと知り合って、魔法を習得しましたよ!でも、案山子壊しちゃいました……。

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