第3話 古傷

 セブミルが戻ってきたのは、ザカムが商隊を整え、被害の確認を終えた頃だった。


 「ザカム!いったい何が?」

 「盗賊です。3人負傷しましたがいずれも軽傷、荷物、馬は全て無事です。…それと、嬢ちゃんに血がかかったぐらいです」

 「コンスタンシェです、コンスタンシェ!ザカムさん、覚えてくださいよ」


 私が膨れて言うと、ザカムは笑って答える。


 「剣だけで生きてきたんだ、頭を使うのは苦手なんだよ。そのうち覚えるから許してくれ」

 「剣だけでは無いだろう?実際お前なら…」

 「それは言わない約束です。…俺の過去はいいんです…」

 「そうだったな、すまない。……あー、コンスタンシェさん、その血はどうせザカムの所為だろう?服代は彼に出させるからできるだけ高いのをねだりなさい。ザカム、関所の方は大丈夫だ。適当な荷馬にコンスタンシェさんを乗せてやってくれ。行き倒れの上に血塗れはあまりに可哀想だ」

 「分かりました。…行くぞ」

 「あ!待ってくださいよ」


 先に行くザカムを追う。


 「ザカムさん、さっき話してた過去っていうのは?」


 聞いた瞬間、ザカムの発する気配が変わった。


 「言わない約束だ」


 そう言った彼の声は、盗賊を相手にしている時より冷たいものだった。私も何も言えず、黙ってしまう。


 「この馬でいいだろう。中身が陶器だから壊れないよう、いい馬に引かせている。関所と街中では商隊の者で通してくれ。行き倒れの事は言わなくていい」

 「分かりました。その…」

 「…俺の過去、いつか時が来れば話してやる。嬢ちゃんが望もうと望むまいと」

 「はい…」




ザカムさん、過去に何があったんでしょう?凄く怖かったです。あれだけ剣の腕がある理由って、いったい……。

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