第2話 襲撃
「盗賊だ!荷物に近づけるな!」
ザカムが叫んだのは、私がザカムの言葉に返事を返し、彼が振り向いて数歩も行かない時だった。
「マズイな、囲まれてる。嬢ちゃん!俺についてこい!絶対離れるなよ!」
それだけ言うとどこかへ走っていく。
「あ!ちょっと、待ってくださいよ!」
追いかけて走った先には3人の盗賊がいた。3人とも長剣を構え、中央の1人は他の2人に比べ、いい装備をしているようだ。
「お前さんが頭か。悪いがここは抜かせないぜ」
ザカムが剣を構える。
「ザカムさん!」
「お、嬢ちゃん。稽古は実践だ!身を守る事だけ考えろ!」
それだけ叫んでザカムは盗賊にむけて突っ込む。抜いたのは左の腰に差した短い方の剣のみ。盗賊たちの持つ長剣と比べると、リーチ差から不利な武器だ。
盗賊たちのリーチに入る直前、ザカムが左に跳び退く。と同時に右側にいた盗賊の胸には、直前までザカムの持っていた剣が突き刺さっていた。
起き上がるザカムは右手に長剣、左手に短剣を構えていた。
「今全員を退かせるなら命だけは保証する!どうする!」
ザカムの叫び声に、盗賊の頭は無言の否定で返す。剣を構え直し、右に回りながらザカムとの距離を計る。残った盗賊も逆向きに回るところを見ると、なかなか慣れているらしい。しかし、ザカムは更に上だった。
「その程度で俺に勝てると思うなよ!」
左手に持った短剣を手下の方の盗賊に向け、見向きもせずに正確に投擲すると、一気に盗賊の頭の横を通り抜ける。残されたのは、短剣の刺さった盗賊が2人と腹部で両断された盗賊の頭だけだった。
「すごいですザカムさん!3人を相手にこんなにはや…」
「残念だったな、あんた。やってくれたじゃないか。でも、ここまでだ。この女を助けたければ武器を棄てろ」
前ばかりを見ていた私の背後に忍び寄った別の盗賊によって、私の首筋には剣が当てられていた。
「ダメですザカムさん!」
そう叫ぶが、ザカムは右手に持っていた長剣を落とし、腰に差していた最後の剣も棄て、背中の大剣も外した。
「いいぞ。そのまま両手を挙げてこっちへ来い」
「ダメですザカムさん!ダメです!」
私の声も虚しく、両手を挙げたザカムがゆっくりと、一切の表情を見せずに歩いてくる。
「ふん、男の奴隷としては使えそうだな。こっちの娘は……、まあ、買い手は……がはっ!」
それがその盗賊の最後の言葉だった。
近寄ってきたザカムは、一瞬で私の差していたショートソードを抜き、そのまま盗賊の眉間に突き刺したのだった。生暖かい血がかかる。
「悪い。街に入ったらまずは宿に向かうようにする。それと服もだな。あと少しだけ待っていてくれ。今度は警戒を忘れるな」
そう言って私にショートソードを押し付けると、自分の捨てた大剣を拾い、走り出す。
そこからは一方的だった。確かに相手の盗賊も手馴れたものだった。しかし、初めに頭を倒された事、そもそも狙う対象が悪かった事、この2つで盗賊は総崩れになった。
包囲していたはずの盗賊たちは、数で護衛たちを押し潰そうとしたが、ザカムと彼に勇気付けられた護衛たちによって内側から食い破られ、散り散りに逃げ出した。
私もまた狙われるかと思ったが、私のところに来たのはザカムが回してくれた2人の護衛だけだった。
ザカムさん、凄く強いです。ただの護衛とは思えませんね。私も自分を守れるようにならないと。
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