手作りの服
手作りの服
一番上の姉は出戻りだった。
姉の結婚のいきさつはよく知らないが、嫁ぎ先は大きな商家であったらしい。
そして義兄は小児マヒであったと記憶している。その頃は小児マヒのワクチンも開発されていなかったのか、決して珍しくはない病気ではあったのだ。幼いころ、何度かこの家に連れて行かれた思い出があって、体全体を揺らしながら歩く義兄に親しみを全く覚えなかったことを記憶している。
この結婚に関しては、かなりの結納金が動いたらしく、本来は大きな農家、地主本家の長女である。その後、複雑な経緯があって今は落ちぶれているとはいえ、素性は正しい娘と、お金はあるけれど五体満足とは言いがたい息子とを、上手く誰かが結びつけたのだろう。
姉には持病があって、娘時代の写真を見ると異常にむくんだ顔をしている。腎臓にでも疾患があったのだろうか、いわゆるムーンフェイスである。その後、従兄でもある母の実家が営む病院に勤める医者が完治させたと聞いている。
その持病のせいかどうか、姉はひどい便秘症であった。トイレに入ると小一時間は出てこず、他の兄妹はとても困っていたらしい。
新婚時代、もうすっかりスレンダー体形に変化していた姉であったが、多分結婚生活は二年はもたなかったのではなかっただろうか。
「雨の中、外に道具がみんな投げ出されていて……」
と誰かが声を潜めて話していたのをうっすらと覚えている。子どもができない、というのが理由だったらしい。しかし、その後姉は再婚して三人の子をなしたし、また義兄だったその人も他の人との間に子どもができ、その家は今も途絶えることなく家業に精を出しているところを見ると、単にそれだけが理由だったとも思えない。
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