役割論者がやってきた

 次の日、早速風船の効果が表れたのか。今日はお昼から忙しかった。


 時間は20時を過ぎた頃、ようやく落ち着いて来た所で、4人の団体さんが見えた。入口の鈴の音が鳴ると同時に頭を下げる。


「いらっしゃいませ」


 お客様は、白いローブみたいなのを着ていて、頭には白のキャップ帽を被っている。昨日、透さんが言っていた役割論者さん達だ。


「んんwww」

「んんwwwこれはやすら・・・殿。相変わらず可愛さに役割が持てますなwww」

「桜桃です。いつもありがとうございます。こちらのテーブルへどうぞ」


 私は、開いている四人テーブル席に役割論者さん達を案内をする。


「今日は新しく入った、役割論理の会のメンバーを紹介致しますぞwww」

「んんwww導かれてしまったんですなwww山田と言いますぞwww」

「んんwww既に苗字に役割が持てているんですなwww」

「迷える子羊は導く以外ありえないwww」


「ご注文はお決まりでしょうか?」


「我は、カレーライスに致しますぞwww」

「我も、カレーしかありえないwwwぺゃwww」

「我は、スパイシーカレーでお願い致しますぞwww」

「我は、ハヤシライスに致しますぞwww」

「んんwwwハヤシライスはありえないwww」

「ここの店は、カレーしか役割が持てませんぞwww」

「そんなに役割が持てるんですかな? では、我もカレーに致しますぞwwwんんwww」


 いつも笑っていて、楽しそうな喋り方をしている。


「アーモンドカレーが3つと、スパイシーカレーが一つでよろしいですか?」

「んんwwwそれで結構ですぞwww所でやすら殿、我等が差し上げた覚まし時計は役割が持ててますかな?」

「桜桃です。はい、いつも目覚まし時計にはお世話になってます」

「んんwwwそうでしょうなwwwこの世で役割が持てぬものはゴミですからなwww」

「んん!? ちょっと待つんですぞ!」

「どうかしたんですかな山田殿?」

「あれをご覧になる以外ありえないwww」


 論者さんの一人が、グニグニ風船を見て指差した。


「んんwww!? これこそ、我等ヤーティ神が探し求めている生物に違いありませんぞwww」

「全部寄越す以外ありえないwww」

「やすら殿、あの風船を一つ頂けませんかな?」

「桜桃です。はい、大丈夫ですよ」


 お父さんが論者さん達にカレーを持ってきた。


「いつもありがとうございます。アーモンドカレー3と、スパイシーカレーでございます」

「んんwwwやなみ・・・殿、景気は如何ですかな?」

「花見です。ぼちぼちですかね」

「んんwwwここのカレーは美味しさに役割が持ててますからなwww是非とも頑張って頂きたいですぞwww」

「ありがとうございます」

「目の前でオープンしたメイド喫茶に負けてはいけませんぞwwwメイドはありえないwww」

「今回は、これを差し上げますぞwww」


 論者さんの一人が、ローブの懐から手の平サイズの箱を取り出して、お父さんに手渡していた。


「これは?」

「役割論理の会で作られた鏡ですぞ」

「これは……手鏡ですか?」

鏡ですぞ」

「え? ああ、これはこれはいつもありがとうございます」


 一瞬だけど、お父さんの困った顔を垣間見た気がする。


「それでは、ごゆっくりどうぞ」とお父さんは、論者さん達の席を後にする。


「ようやく、我等の唯一神ヤーティ神が探していたものが見つかりましたな」

「んんwwwこれで我等も役割が果たせるというもの」

「やはり『唐辛子亭』は役割が持てているんですな」

「んんwwwこの後は、公園にて、ヤーティ神に捧げますぞ」


 ……ヤーティ神? 盗み聞きするつもりじゃなかったんだけど、いくつか気になる事が出て来た。

 なんで、グニグニを探していたのか。

 それって、まさかとは思うけど……。


「桜桃、もうそろそろお風呂に入って寝なさい。今日は疲れたろだろ?」

「はい、お父さん。皆さんも、御先に失礼します」


 それだけを言って、私はお店から家へと繋がっている勝手口を後にした。

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