悪魔バンプフール・グイソン
学校に辿り着くと、空は既に、オレンジに染まる夕暮れ。
学校には、既に人は居ないみたい。教室には何か、もぞもぞと黒い影が動いている。私の手には、あらかじめ白兎君に召喚してもらった剣を片手に、音を立てずに教室に入る。私の後ろには、変身を終えた白兎君が居る。
一応、戦闘準備は万端。
「……やっぱり、あれ悪魔だよね?」
どうやら皆の絵に何かしているみたい。鞘から剣を抜いて黒い影に刀身を向ける。
「ちょっと! そこの悪魔! 人の絵を消すのを止めなさい!」
私の声に、悪魔は振り向いた。それは豚が二足歩行で歩いている。偉そうにマントみたいなのを着ている。あれ? この豚何処かで見たことあるような……!
「あ! オークだ! マジカル☆サナちゃんに出て来た、ドドンゴー四天王のオークだよね?」
「なんだお前ら?」
オークは、のっそりと動いてこちらに近づいて来ます。
「僕はバンプフール。偉大なるグイソンの末裔だよ? ……僕の食事を邪魔する気?」
「おい、バンプフール。辞めといた方がいいぞ」
ぜるぽんが、オークに話しかけました。
「ゼルノアル? ふーん、人間共に寝返ったんだね。別に邪魔さえしなければ人間に危害を加える事はなかったんだけどぉ」
すると、オークは私達の横で宙に浮くグニグニを見ました。
「なんだ、グニグニ。こんな所に居たのか。探す手間が省けた」
「グイソンの末裔よ、君もバアルの末裔にそそのかされた口かい?」
「まあ、そんな所かなぁ。でもそれ以上に、僕は君の事が嫌いなのさ」
オークは、近くにあった机を掴み、それを投げつけてきました。慌てて、私と白兎君は避けます。そして机は、グニグニとぜるぽんに直撃しました。
「子供二人、どっちから食べられたい? んん?」
「く、ころせー!」
「……。」
「く、ころせーく、ころせー!」
あれ? 演技がイマイチかしら? オークは、冷たい目で私を見てきた。
「そんなに死にたいなら殺してあげるよ。僕はね、インクの味とか、そういうのが好みなんだ。人間は好みじゃないけど、食べれない事は無い」
オークは、口からインクを出して、床にぶちまけた。インクは、魔法陣に見える。
「
悪魔の魔法が光る。でも白兎君も既に、魔法陣を描き終わっている。
「
白兎君の魔法陣が光り、光の鞭がオークを捉える。
オークは、大きく口を開くと、光の鞭が吸い込まれてしまった。
「嘘!?」
物凄い勢いで引き寄せられる。周りにあった椅子や机、掴んでいた剣もオークに吸い込まれてしまった。私も踏み留まれず、足が宙を浮いてしまう。
「危ない、桜桃ちゃん!」
白兎君が、手を掴んでくれた。でも、このままじゃ……そんな時、私のスカートが、激しい吸い込みによって脱げてしまった。
「きゃあ、私のスカートが!」
やだ、恥ずかしい! 私パンツ丸見え! 私のスカートは、オークの口の中に吸い込まれる。
「んん!? なんだこれ? ——ぎゃあああ!! こ、これは、緑色!?」
吸い込みが収まって、オークの口から出て来たのは、山葵味の飴でした。
「なんなの?」
私は、ブラウスを精一杯伸ばして、パンツを隠す。
「どうやら、こいつは緑色のものが弱点みたいだね。それで僕の絵だけ食べられなかったんだ」
白兎君は、緑の絵具を握りしめていた。近付いて、悪魔目掛けて一気に握りしめると、緑のインクが悪魔の目に着いた。
「ぎゃあああ!!! 目が! 目がぁぁ!!」
どうやら効いているみたい。だったら!
「これでもくらえ! マジカル☆グリーンライト!」
ペンライトのスイッチを入れて、オークの目を照らす。
「ぎゃああ溶ける! 緑は辞めて!」
「とどめよ! マジカル☆グリーンリミックス!」
私は、机に挟まっているグニグニを掴んで、オークの口に詰め込んでやった。
「「ぎゃあああああ!!!!」」断末魔が重なる。
そして、オークは泡を吹いて、そのまま後ろへと倒れた。
オークとの勝負に勝つことができた。
「ごめんなさい ごめんなさい! 飲み込んだ絵は返します」
目を覚ましたオークは平謝りで、見る見る小さな子豚になった。
「もう、こんな事しない?」
「しません。大人しくレイティルフィアに帰ります。本当にごめんなさい」
そう言って、オークは門を作り、そこから飛び込んで行った。なんとか勝つことが出来て良かったと、安堵の息を吐く。
「一件落着かな?」白兎君は、言う。
「みたいだね!」私は、笑顔で答えた。
「幸せそうだね! ケッ!」
グニグニは、全身泡だらけで拗ねていた。ちょっと臭い……。
皆の書いた絵が元に戻る。明日は、少しの時間だけで仕上げる事ができそう。水奈ちゃんも、身投げする事もなさそうだし、加島君も疑いが晴れて、太井さんも、もう泣かなくて良いよね?
後日、白兎君が書いた
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