夢物語
@10071999
第1話
少し遅れて咲いた岬市の桜は、ちょうど入学シーズンとうまく重なり、新しい出会いを祝福するかのように俺の通う 岬高校までの並木道に満開である。
高校に入学してから一年が経つと思うと早かったなと新入生の真新しい制服姿を見て思うところもあるが、今や見慣れた校舎に近づくにつれて、早く家に帰りたいと思っていた。
一年のときは、何もかもが新しいことに不安を覚えて帰りたいと思い、今はまた同じような一年を過ごすのだと考えると帰りたくなった。
だがしかし、不安しかないというわけでもない。
クラス替えだってあるし、担任だって変わる。去年のように特に何もなかったつまらない一年ではなくなるかもしれないと期待していた。
もしも、同じような日常の中に悪の秘密結社、あるいはどこかしらで宇宙戦争やら何やらと起きているかもしれない。
と、考えたことはある。
だがしかし、現実っていうやつは以外と厳しい。
そんなものの可能性など微塵にも感じさせないほどによくできている世界だ。宇宙人も未来人も超能力者も神でさえも誰もが心の奥底ではいないじゃないかと確信を持てる。
いつしかUFOや古代兵器などのオカルト系の番組も真面目に見なくなった。
それほどに俺も成長したというわけだ。
このまま死ぬまで何も変わらない終わりの見えない普通の人生が続くと思っていた。そう、続くと思っていたんだ。
いつか何となく就職して何となく結婚して何となく死ぬんだと思っていた。
ーー古都このはと出会うまでは。
夢物語 @10071999
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