23】彼女のいない日 -1

 僕は、織野司。

 本日時点で18歳。

 誕生日は、4月24日。

 身長は、165センチ。

 体重は、55キロ。

 成績は、偏差値52。

 部活は、未所属。

 友だちは、五人ほど。

 両親は、共働き。

 健康状態は、いたって異常なし。

 そして。

 精神状態は。

 ――最悪。



 次の日から。

 沢瑠璃さんと絶望的な別れを経験した日のその次の日から。

 沢瑠璃さんは、学校に来なくなっていた。


 それを知ったのは、三日目の昼休みだった。

 絶望的な別れを経験した翌日、そしてその翌日も、当然ながら(というべきだろうか)沢瑠璃さんからメールが来ることはなかった。沢瑠璃さんはどうしているのか、とメールをするか教室を覗きに行くかを考えたけれど、僕が結局その選択肢から選んだのは教室を覗きに行く、だった。


 昼休み、僕は意を決して沢瑠璃さんの教室を見に行った。始まったばかりの昼休みなら、軽く覗くくらいなら目立たないだろう。

 けれど、沢瑠璃さんの机には誰も座っていなかった。椅子も引かれてないことから、誰かが座っていた形跡もなさそうだった。僕の目には、沢瑠璃さんのその席だけがこの教室からどこか疎外されているような、そんな寂しげな風景に映った。


 けれどそれでも沢瑠璃さんがたんに席を空けているだけかもしれずどう確認しようか考えていると、タイミングよく教室から沢瑠璃さんの担任の先生が出てくる。


 尋ねてみると。

 沢瑠璃さんはこの三日間、休んでいた。しかも無断欠席で、両親もその事を知らなかったらしかった。今日も母親を呼んで話し合いを行うらしい。


 僕は先生に頭を下げながら、沢瑠璃さんが無断欠席を続ける理由を探す――ことはしなかった。


 探すまでもない。沢瑠璃さんはこれまでと変わりなくおでんを探しているのだ。いや違う、変わりないことなんかない、前よりも懸命に、執拗に、おでん探しに没頭している。しかも明らかに悪い方向へ。学校を親にも無断で欠席するなんてどう考えても尋常じゃない。


 僕はそのまま教室へ戻るとスマホを取り出し、意を決して沢瑠璃さんへ『学校来てないの?』とメールを打つ。僕は、沢瑠璃さんの電話番号を知らない。彼女への連絡手段は、それしかなかった。


 返信はすぐにあって、けれどそれは宛先の見つからないエラー返信だった。沢瑠璃さんはメルアドを変更していた。それはこの現代にあってもっともシンプルで絶対的な拒絶反応だった。

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