第10話

暗闇に飲まれたわたしたちが考えること、その顛末。



ウトウトとしていた。

船の中であろうとそうでなかろうと、時間をかけてただ待つときに、娯楽がなければ眠るしかないのだからわたしが眠たくなったのも仕方がない。

サイトーさんの……、いやなんでもない。


鳳麗、わたし、ホァレイは巨鯨ジゥゲイに飲み込まれたまま、身動きがとれなくなっていた。わたしの胃の中に過去流し込まれた各色様々のペーストたちと同じように(わたしはまだペースト状に変形したわけではないけれど)まぁ、だいたいおんなじ調子でわたしはジゥゲイの胃の中に押し込まれたようだった。

とはいうものの実際、正確に、今ジゥゲイの体のどの辺りにいるのかはわからないが、ツァオロンのモニタはジゥゲイの体液で黒く塗りつぶされ、計器類はグルグルと針と数字が行ったり来たりした後に機体がどこかジゥゲイの内部に引っかかって斜めに傾いだ形で静止したことを示していて、マザーと通信するためのスピーカーからは何やら振動音のようなものだけが小さく流れていた。


ディスプレイを確認するとパイルバンカーは射出可能な状態だったが、勢いよく射出した後に反動を制御できるかはあまり自信がない。ブースターは完全に生きている(奇跡!)。目隠しをしたまま、めちゃくちゃに動いても大丈夫だろうか?ツァオロン内部のパイロット環境から一歩外に出たら無重力で無酸素なのかな?あぁ、外にいるわたしたちは無事だろうか。


顔にアザができようがなかろうが、わたしである鳳麗、ホァレイの意識は独立していながら未分化だった。わたしたちはジゥゲイに食べられたってわたしでありわたしたちだった。


で、わたし以外のわたしたちジゥゲイの外にいる鳳麗たちが外で奮闘した結果、なんだか焦りと諦めが混じった感情が流れてきて、わたしはじっと待つことにする。

わたしたち人類は巨大な宇宙鯨を食べないけれど、彼ら/彼女らは人類と鳳麗とその周りにくっついている無機物を食べていくのだ。

きっと、その逆はない。

わたしたちができたのは、ジゥゲイを殺すことだけだったのだから。

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