Dangerous(危険・物騒)
帰り道、DyeはDoomを抱え上げて走っていた。ぶらぶらと揺れる足からは血の雫が滴っている。片手にはユニット二つ、もう片方の腕にはDoom。人間ではありえない速度でDyeは瓦礫だらけの廃工場を駆けた。あちこちで衝突音が断続的に鳴る。Dyeは壁が崩れ、半分になった小屋へ転がり込んだ。
床へ降ろされたDoomはフライトジャケットを探る。鋭い痛みが脚を刺していた。指がプラスチックのパッケージを探り当て、Doomはそれを乱暴に引きずり出した。ぱき、と押し出した小さなタブレットを、震える指先で口へ運び、迷いなく奥歯で噛み砕く。アドレナリンによって痛みが痛みと感じられなくなったが、それも長くはもたないだろう。そもそもこれは元来痛み止めではないのだ。効果が切れるその前に、安全な場所へ行かなければ。傷は小さいが、やや深い。
「なぜ、俺を助ける」
息を詰め、唸るようにDoomは問うた。愚問だな、とDoomは思った。パイロットなしではとてもこの星から出ることは叶わないだろう。Dyeははっと顔を上げると、肩に爪を立て高速で打鍵した。それは英文のモールス信号だった。
『(あと!)』
DyeはDoomを抱え上げ、離脱した。さっきまでいた場所に瓦礫が崩れ落ちてくるのをDoomは目にした。
そうして、Dyeはデリシャス・メテオまでDoomとユニットふたつを抱えて走りぬいた。タブレットによる薬物酩酊の、嫌にはっきりした意識の中でDoomは対空設備の意味を悟った。
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