Dim.Draem(過去の栄光)
DollyDoll社造船所跡は住む者のいなくなった、小さな惑星の上にある。発着ポートが崩れていないことを確認して、古びたコンクリート敷きのそこへ、デリシャス・メテオをゆっくりと降ろした。
「ここだな」
Dyeは頷く。Doomは仕事用の黒ネクタイを締め直した。帽子とフライトジャケットを身に纏い、地上へ降りたつ。空は青く、地上には緩やかな風が流れていた。
発着ポートの横には多量の対空設備が投げ出されていた。稼働していたころの造船所には、やはり宇宙海賊が来ていたのだろうか。Doomは過ぎ去った栄光に思いを馳せ、詮無いことを考えた。
船を降りたDyeは、Doomを先導し、建物を目指した。瓦礫だらけの道だったものをたどり、すいすいと歩いてゆく。半壊した建物や色あせた看板に錆びた塗料の缶。拾った缶を覗き込むと、中の塗料は溶剤が蒸発して、一つの塊になっていた。
Dyeは船渠の横にある建物を指差した。ここに、目当てのものがあるのだとDyeは言った。
一片の迷いなく扉を開け、階段を上り、Dyeは誰もいない廊下を、傷だらけのリノリウム張りのオフィスを、埃だらけの暗い倉庫を通り抜けていく。探索というにはあまりにもあっけないそれを経てDyeがDoomに見せたのは、小さく赤い、なんらかのユニットだった。それがなんなのかDoomには皆目見当もつかなかったが、Dyeの様子から目の前の物品が大事なものであるらしいことはわかった。
「これが欲しかったのか?」
『そう、それともうひとつ』
DyeはDoomを手招きし、ついてくるよう促した。DoomはDyeを追いかけた。次にDyeが手にしたのは、またも見たことのない機材だった。Doomはそれを手に取り眺めまわした。重く、白い箱だ。DollyDollの製造コードが付いていること以外は、なにもわからない。デリシャス・メテオの内部にはこの形のユニットはなかった。
『渡航費用』
書いたメモをちぎって添え、DyeはDoomにユニットを渡した。
外に出たDoomたちを迎えたのは、地上では降らないはずの隕石の雨だった。
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