Dock(船渠)

抜けるような空の下、船渠に据え付けられたアームたちがせわしなく動く。アームはひしゃげた部分を直し、剥げた塗料を塗り直していく。Doomはその手際よく修理されていくさまを、キャットウォークの手すりに腰かけて眺めていた。風が吹き、肩にかけたフライトジャケットの袖が揺れてチャリチャリと音を立てる。目を上げれば、地上の青空が見えた。温かな陽光に白い船体が映える。

デリシャス・メテオはとりわけ美しい船だ。流線型の優美な見た目と、それにそぐわない大型のロケットエンジンを積んだ小型輸送船。Doomはこの船が好きだった。

地上で見るデリシャス・メテオは只々美しい。Doomは壁にもたれてうとうとしていた。次の改装では一体何をつけようか。デリシャス・メテオは手をかければそれだけ強く、速くなっていく。

外装が直り、デリシャスメテオが再び非の打ちどころのないコンディションに戻るまでの数日間、Doomはひと時、地上での平穏を得た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る