Drive(星間飛行)

Doomは黒の皮手袋を付けた手で操縦桿を握りしめた。無理な角度に引き倒し、ボタンを力任せに押す。直後に振動。発射された迎撃用ミサイルが進行方向の隕石を散らした。続けて二発。前から飛んできた流星を、船はギリギリのところで避ける。Doomは奥歯を噛みしめた。

流星群自体は珍しいことではない。星が降る夜には地上で暮らす人間たちは落ちた星のかけらを探して池を網でさらう。牧歌的で何の害にもならない、のどかでありふれた光景だ。昔はそこに自分もいたものだ。地上で見る流星。危険なことなど何もない、儚く煌めく一夜の夢。

「……」

Doomは計器を睨み、操縦桿を握り直す。流星群は美しく夢のよう、されどもここは現実だ。冷たい土塊が絶え間なく降りそそぐ、悪夢のような嵐の中をDoomは装甲一枚で飛んでいる。幾ら宇宙を航行するために造られたとはいえ、デリシャスメテオは民間の造船所で設計された個人用輸送機でしかない。当然装甲は薄く、速度のために肉抜きされたボディは非常に軽い。軍用輸送機には遠く及ばず、隕石と正面衝突すればひとたまりもないこの船で、Doomは宇宙の闇を飛んでいる。

このまま、いい加減感覚の失せてきた手からその元凶たる操縦桿を放り出せば、二分と待たず死ねるだろう。前にもこんな夜を飛んだ事がある。あれは貴金属を運んでいたときだっただろうか。あの時の雨は銃弾だった。硝煙香る嵐の中、Doomは死線をデリシャスメテオと共に駆けた。

船が強く揺れた。Doomは舌打ちする。流星の一部がデリシャスメテオの装甲を掠め、流れていったに違いない。レーダーを確認。機械部・気密に損傷は無し。ならば上々。Doomはレバーを引き、エンジンの出力を上げた。船が加速する。息を吸い、浅く吐いてを繰り返す。Doomは目を見開いたまま、死の雨の中を超高速で飛んだ。

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