大きな宇宙船
荒野に一台の宇宙船が降り立った。
地上には連絡を受けた報道陣がすでに集まっていた。彼らの目を引いたのは宇宙船の大きさだった。
「あんなに大きな宇宙船でやってくるとはな。」
「乗ってるのは、人間の何倍もある巨大な異星人かもしれない。」
人々はしきりにその話題を話し合っていたが、やがて宇宙船の入り口が開いて一人の異星人が降りてきた。
見た目は非常に人間に似ていたが、小柄で肌の色に少し青みががっている。彼はマイクのような物を取り出し、その場に集まった人達に対して呼びかけた。
「地球の皆様ごきげんよう。コレ星から皆さまと友好を結ぶためにやってきました。よろしければ、地球の代表者を呼んでくれませんか。」
態度は友好的なようだった。すぐさま代表者に連絡が取られ、それまでの間に記者からコレ星人に向かって質問がなされた。
「しかし宇宙航海を実用化しているとは驚きました。地球では技術的には手が届くところまで来ているんですが、色々問題も多く。」
「たまたま、こちらの文明が少しだけ進んでいただけですよ。あなたたちの方が先に宇宙を渡ってくるかもしれなかった。」
喜ばしいことなのかは分からないが、文明のレベルはそこまで差が開いてるわけではないらしい。
また宇宙船の中のコレ星人は彼一人しかいないようだった。
「こんなに大きな宇宙船を一人で操縦してきたんですか。」
「いえ、他にも沢山の乗組員がいたんですが。」
過酷な旅だったのだろう。同情するとともに、やはり星を渡るとなるとあれほどの大きさが必要なのかと感心する。
その質問の途中で、地球の代表者からの迎えが到着した。話し合いのために近くの迎賓館に招待するようだ。
「それでは、両星の出会いと友好に乾杯。」
コレ星人からの要望もあり地球の要人達を集めて食事会が開かれた。そこで両星の友好条約が結ばれた。どうやらコレ星人は食事というものを大切にしているらしく、このような取り決めも相手との仲を深める意味もあって食事会の中で行われるしい。
「地球の料理は凄く美味しいですね。」
宇宙船の中の食事情は良いとはいえなかったのか、元々よく食べるのかだろうか、出された料理をあっという間に平らげてしまう。
話し合いも順調に進みコレ星との交易条約も締結された後、この吉報を届けるためコレ星への帰還の話しが出てきた。
「私達もできる限りの支援をします。なにか必要なものがあれば言ってください。」
「では、帰り道の人員を集めましょう。あの宇宙船を一人で動かすのは大変ですし、なによりも乗組員の最大の仕事は食料になることですから。」
その言葉に地球側は騒然とした、彼の説明によると宇宙船の中の食料は限られているので、航海が軌道に乗ると乗組員は他の乗組員のために自らを提供していくらしい。
「宇宙の中でのわずかな贅沢という意味もあるんですよ。無味乾燥な宇宙食と違って人肉は非常においしいですから。」
地球の代表者は苦い顔をした。いくら過酷な旅だからといってもそんなことをして良いのだろうか。いやコレ星人には食人文化は一般的ものかもしれない。そんな彼と本格的に交易を始めた時のことを考えると。
持っていた翻訳機では聞き取れない程、なにかを地球人達が口々に話し合い始めたのを見て、コレ星人は言った。
「心配しないで下さい。宇宙船の操縦の方法も、味付けもこちらで準備できますから。喜ばしいことに地球人はコレ星人に似ていて非常においしそうだ。」
彼はうっとりとした様子で目の前の地球人達を見ながらデザートをほおばった。
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