第5話 強敵 ドクター・フランケン その2

 「貴様はあの時の!!

 ドクターダメです!!こいつだけはダメです!!」

 デニムは顔を真っ青に変えるとドクターにすがりついた。


 「大丈夫だ!そのスーツはお前さんの能力を一〇倍に強化している。

 ちなみに、もし逃げたら「強化スーツを自爆」させるからそのつもりで。」

 「わ…わかりましたー!!」

 泣きながらデニムはシードラゴンマスクに襲い掛かった。しかし…。


 「シードラゴン百列拳!!」

 シードラゴンマスクから無数の拳が放たれ、あっさりデニムは後方に吹き飛ばされた。


 「違う、今度はあんまり痛くない。」

 しかし、デニムはあっさり立ち上がった。ほとんど傷も負っていないようだ。

 「はっはっは見たか!わしの作った強化スーツの威力を!」

 誇らしげにドクターと、そのかたわらで「助手型妖精ロボ」が空に浮かびながら

笑っている。


 「今度こそ、行けるぞ!」

 デニムは再びシードラゴンマスクに襲い掛かった。

 「シードラゴン二百列拳!!」

 シードラゴンマスクが再び無数の拳を放つとデニムは思い切り後方に吹き飛ばされた。

 そして、今度は痛みの為になかなか立ち上がれない。

 「どういうことか聞きたそうね。」

 シードラゴンマスクはにやりと笑った。

 「『シードラゴン二百列拳』は相手が改心するか、『二百に裂けるまで殴り続ける』究極の技。そろそろとどめといこうかしら。」


 「ちょっと待って!!前回はちゃんと降伏勧告してくれたでしょ!!」

 デニムは完全に気圧されて「伯爵の威厳」もどこへやらである。

 「え、『自爆装置』が用意してあるんじゃ、降伏勧告してもしかたないでしょ?」

 「いやーー!!」

 完全に号泣しながらそれでもデニムはシードラゴンに襲い掛かったが…。


 「シードラゴン『シルバー』パンチ!!」

 シードラゴンマスクの左手がデニムの鳩尾みぞおちを完全に捉えた。

 「シードラゴン『ホーリーウォーター』キック」

 そして朦朧もうろうとしていたデニムを回し蹴りでなぎ倒した。


 「ま、待て……。」

 それでもデニムは何とか最後の力を振り絞って立ち上がった。

 「名前の数を増やすとか、「シルバー」とか技の名前を変えるだけで攻撃力が変わるなんて、

おかしすぎるやん。」

 「残念ね、伯爵。あなたは最新の医療常識を知らないようね!」

 ちっちっちと指を振りながらシードラゴンマスクは笑った。


 「プラシーボ効果のことを知らなかったのが、あなたの敗因だわ。」


 「なに!プラシーボ効果だと!!」

 ドクターは愕然となった。

 同じく驚きながら妖精ロボが付け加える。

 「はい、ドクター。プラセボ効果(プラシーボ効果)とは、偽薬を処方しても、薬だと信じ込む事によって何らかの改善がみられる事を言う。この改善は自覚症状に留まらず、客観的に測定可能な状態の改善として現われることもある。(Wikipediaより)」


 「それ違うやん!!あんた、わかっててやってるやん!!」

 「甘いわね。思い込んだら命がけって言葉もあってね。『自分をだましてしまえば』

こっちのものだわ。あと、『言霊ことだまによる効果』も見逃せないわね…多分」

 「ノォォォォ!!!」

 シードラゴンマスクの「数々の精神攻撃」の前にさすがの不死身の伯爵もぶっ倒れたまま動かなくなった。




 キャプテンゴージャスが光線を連発する中で、リザードマン戦闘員たちはドンドン後退していった。

 そのなかでキャプテンゴージャスの前方と、そして、自分が守っている後方から

 真っ黒なローブを被ったひときわ大きな敵が近づいてくるのに千早は気付いた。

 (こいつら、ただものではない!!)

 千早は刀を抜くと滑るように目の前の敵に近づいて行った。


 そいつは黒いローブからはみ出した黒手袋をはめた両手で巨大な鎌を持ち、

 千早の接近に気づくとその巨体にふさわしくない猛烈な速度で千早に斬りつけてきた。

 キンキンキン!!

 何度も大鎌と太刀で撃ち合った後、千早は少し距離を置いて身構えた。

 人間とは思えない異様な殺気をほとばしらせながら、ローブの奥にちらちらと白い骸骨らしい影が見えているのが非常に気味が悪かった。

 (こいつ、手ごわい!!)

 相手のすきをうかがいながら、千早はすり足で移動を始めた。



 「戦闘員ども下がれ!ここからは俺がやる!!」

 キャプテンゴージャスの前に出てきた黒ローブの影は、ローブを脱ぎ捨てて叫んだ。

 「俺の名は『サラマンダー・ジェノサイダー』!お前たちはこの銃のさびにしてくれる!!」


 六本腕の真っ赤なトカゲ型の大男は背中に金属製のタンクを背負い、三対の手それぞれで機関銃を構えていた。

 「女剣士の相手は『ブレイド・デス』がしているのか。では、俺の相手はキンピカ男だな!」

 サラマンダーは機関銃の銃口をキャプテンに向けて構えた。


 (こいつら、「生命エネルギーの量」が桁違いや!凄まじい妖怪をさらに武器で強化しとるんやな!!瀬利亜さんは大丈夫やろうし、千早さんもいけそうやけど、わてらではまずいかもしれん!!)

 タブレットに出ている情報を分析しながら、マジシャンは焦った。

 (なんとか、わてがキャプテンゴージャスを援護せんと!)

 電脳マジシャンは「謎の道具箱」から小型バズーカを取りだそうとした。


 「はっはーー!!喰らえ喰らえ喰らえ!!!」

 サラマンダーは狂ったように叫ぶとキャプテンに機銃照射を繰り返した。

 ズガズガズガズガズガ!!!!!!!

 何百発の弾がキャプテンゴージャスを人形のように弾き飛ばした。

 「はっはっは!キャプテンスーツの防弾性能はそんな機銃なんぞでは破ることはでき…げほげほ!」

 「わーー!キャプテンはん!!」

 スーツだけは無事だったものの、明らかにズタボロになっているキャプテンゴージャスの姿に電脳マジシャンは悲鳴を上げた。

 「これでも喰らいや!!」

 引き出したバズーカで正確に狙いをつけると弾は正確にサラマンダーに命中、大爆発を起こした。

 「やったか!?」


 「やってくれたな!だが、炎の精霊たるこのサラマンダーには爆発は効かん!」

 残骸となった機銃を投げ捨てると、サラマンダーは背中のタンクに括りつけてあった銃口を電脳マジシャンに向けた。

 「喰らえ、ヘル・ファイアー!!!」


 銃口から噴き出した猛火をとっさに飛んで避けた電脳マジシャンは後方のお化け屋敷だったものが、炎で『消し飛ぶ』のを見て震え上がった。

 (こいつ、攻撃力が「怪獣並」やんか!!たしか、一応『冷凍銃』なんてものもあったはずやが、こいつに通じるやろうか…)

 どうやって、「道具箱まで近づこうか」と電脳マジシャンはサラマンダーを睨みながら必死に考えた。




 「ふん!!」

 何度となく、斬り結んだあと、千早はようやくブレイド・デスの大鎌の柄を切り落とした。

 ブレイド・デスは、ローブを投げ捨てると、懐から二振りのアーミーナイフを取り出すと、「軍人式」に身構えた。

 (こ、こいつは一体!?)

さすがの千早もブレイド・デスの異常な姿に目を見張った。

 全身黒ずくめの「マッチョな大男」が体の前面に蛍光塗料で「どくろ模様の白いペインティング」をして、両手にアーミーナイフを身構えているのだ。

 この状況でなかったら100%間違いなく「ただの変質者」扱いしているところだ。

 しかし、いくら変質者とはいえ、今までの激闘から「百戦錬磨ひゃくせんれんまの変質者」であることは間違いないと千早は感じている。

 深く深呼吸すると、千早は刀を構え直した。

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