第5話 月の裏側


異変に気付いたのは3分くらい経ってからだろうか。

その飛行物は明らかにこちらの方向に向かっているし、先程は月と重なっていたために分からなかったが、光を放っている。

ここで頭をある考えがよぎった。

これはちまたで言うところの、ユーフォーってやつじゃないか?

"僕"が発見したことに気がついて、殺しに向かってきてるのでは?


妄想は加速する。


このままじゃ家族全員皆殺しだ。どうせこの世とは思えないようなおぞましい生物が降りてきて、頭から丸呑みされるのだ。そしてそれを偶然目撃していた近所の人も殺されてしまい、駆けつけたお巡りさんも殺され、しまいには宇宙戦争が勃発する……。月の裏側には宇宙人の基地があったんだ!なんてことになってさ。



一瞬の内に色々と想像は膨らんだが、頭は極めて冷静だ。

あれはただの飛行船か何かで、うちのはるか上空を過ぎていくだけさ。

光っているのも宣伝のためだろう。なんともつまらない。




そう思っていたんだ。

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