第2話 準備


うちは二階建ての一軒家で、かるくバトミントンができる程度の庭もある。

父方の祖父がバブルの時に土地を買っておいたおかげで、低収入の父親でもどうにかこんなに立派な一軒家をこさえることができたらしい。

"僕"も大学生になっていい大人なんだろうし、お年玉なんていいから土地が欲しい。



冷たくうす暗い廊下を抜けてリビングに行くと母親は電話をしていた。

"僕"と目があうと、

「じゅ・ん・び・し・て」

と不細工な顔で、声を出さずに口だけ使って伝えてきた。

「はい、はい。」

"僕"は無言で少し頷いて、仏壇のところに向かった。



自分の母親がグラビアアイドルだったらなあ。

さっきの不細工な、苦しくも自分にそっくりな顔を思い出しながら、"僕"は準備に取り掛かるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る