本編 2 父について
いつだったか説教に夢中になった父が、僕の胸ぐらを掴んで壁におしつけ、
「ええか、おめえの幸せなんてどうでもええねん お前の幸せなんてどうでもええねん」
と言ったのを覚えている。
ああ、この父は、こんなにも僕が傷つきそうなことを言っている、
そう思ったのをよく覚えている。
自殺する理由は人によって様々で良く知らないから、僕の自殺について何が特徴的かを僕が述べることはできないが、
「僕にとって」何が重要か、主なものであるかというと、
やはり父が関係してくる。
うらみ言を言うことはできない。
僕はもう僕自身について全て諦めているのだから、
自分の意思とか主体性とかそういうものを放棄しているのだから、
同様に、他人にも意思や主体性を認めていない。
つまり、僕についての「あの時こうしていれば」「もっとこうできたろう」という意見を全部退ける代わりに、
他人に対しても、そういう意見を一切抱かない。
今で言えば、僕が死ぬ理由について、僕は若干罪悪感を感じているが、
この責任は僕にあるわけじゃない、と結論づける代わりに、
同時に他人に責任があるわけじゃない、とも言わねばならない。
つまり僕の生き方や選択が間違っていたわけでもなければ、周りの人の態度や接し方が間違っていたわけでもないし、父の育て方や態度が間違っていたわけでもない。そういわなければならない。
と、長々書きながら、結局僕は父へ逆恨みのようなものを感じていて、隠しきれていない。
僕の半生を書こうと思った。
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