第四〇話 やるべきことのお話

 クロスボウを取り戻した僕は、道路に沿って南に歩き続けた。途中で藪は切れたので仕方なく何もない荒地を歩くことになったが、周囲に人影は見えない。それに二人組の死体を始末している間に陽は完全に沈み、辺りは完全に真っ暗になった。この暗さでは誰も僕を見つけることなど出来ないだろう。



 ――――――などという楽観的な予測は、次の瞬間突如視界を塗りつぶした白い光によってかき消された。今の今まで背景の一部と化していた街灯が、突然光を灯したのだ。


「うわっ……目が、目があ」


 それまで暗闇に慣れ切っていた僕の目は、突然灯った街灯の光に耐えられなかった。視界が真っ白になり、太陽を直接見てしまったかのように黒い染みが視界を覆う。とっさにその場に伏せた僕の耳に、乾いた破裂音が届いた。


 銃声だった。それも一つではなく複数の。聞こえてくるのはどれも単発の銃声で、おそらく猟銃か拳銃を撃っているのだろう。銃声が交互に聞こえてくることから、銃撃戦が起きているようだ。

 感染者は銃を撃つ知能なんてないから、守備隊の連中が戦っている相手は人間だ。青年はナオミさんが銃を奪って逃げたと言っていたから、もしかしたらもう一方の銃声の主は彼女かもしれない。ナオミさんたちが無事だったことに安堵したが、銃撃戦に発展しているということは彼女たちが守備隊の連中に発見されてしまったということだった。


 銃声は南の方角から聞こえてくる。役場があって建物も多い、村の中心部だ。あそこなら確かに隠れる場所も多いし、何より僕らが暮らしていた家にも近い。多分ナオミさんは銃を手に入れた後さっさと村を脱出せず、僕を待っていてくれたのかもしれない。単に敵の警戒が厳しくて脱出できなかっただけなのかもしれないけど、置いて行かれなかったことだけは嬉しかった。



 それでも、こんな状況ではすぐにジリ貧に陥ってしまうだろう。見ればそこらじゅうで街灯が点灯を始め、村の中心部も光に包まれている。昨日まではいくら夜でも、村の中に明かりはほとんど点いていなかった。大和が事態を重く見て、僕らを発見しやすくするために非常用の発電機を運転させたのだろう。


 これで僕のアドバンテージが一つ失われてしまった。明かりが点いているとこっちも敵を見やすくなるが、かえって相手も僕を視認しやすくなる。せっかく夜目を聞かせて闇の中から襲い掛かっていたのに、これではその戦法が採れない。闇の中で感染者と戦ってきた経験も、まばゆい光の中では何の意味もない。


 僕は暗闇という最大の盾を失ったが、相手には地の利と数と強力な武器がある。ハッキリ言って僕が勝っている点はほとんどなく、分が悪いどころの話ではない。これがゲームか何かだったら敵味方の戦力差が開き過ぎて、クソゲー扱いされるだろう。

 かといって今さら大和らに投降することも出来ない。もし僕が彼の話に同意していたのなら僕らは殺されずに済んだのかもしれないけど、今となってはどうにもならないことだ。僕がやるべきことはナオミさんたちと合流して村から脱出すること、それだけだ。



 数分の後ようやく視界も正常に戻り、僕はポケットから青年に貰った村の地図を取り出した。村の地図には青年が描き込んだと思しき様々な情報が記載されていて、僕はその中に「発電所」の文字があるのを見逃さなかった。

 インフラが死んだ今、山に立つ巨大な送電用の鉄塔はただの鉄骨の塊と化している。村の外から電気はやってこないのだから、電力を使用したいのならば自分たちで生み出すしかない。しかしこんな人里離れた小さな村の中に電力会社がわざわざ発電所を作るとも思えないから、この「発電所」とは自家発電装置か、集めてきた発電機が纏められている場所のことを意味しているのだろう。


 村役場や市役所などの公的機関の建物には、災害時に備えて自家発電装置が備え付けられていると聞く。事実感染の拡大によってインフラが死んでからしばらくしても、市役所には明かりが灯っていた。しかし自家発電装置はあくまでその建物で消費される電力しか賄えないはずだから、村中に電気を行きわたらせるには発電機が別に要る。そこが発電所とやらなのかもしれない。

 発電所とやらはここから南西、街の中心部の北東にある。今僕がいる場所からはかなり近い。歩いて二〇分くらいの場所だろうか。


 ならば、やることは決まっている。その発電所とやらに侵入し、村への電力供給を絶つのだ。そうすれば村の連中は大混乱に陥るだろうし、僕はもっと行動しやすくなる。ナオミさんたちも敵の混乱の隙を突き、戦闘を避けられるかもしれない。ナオミさんも戦争の際真っ先に破壊すべきは電力網などのインフラだと言っていたし。


 だけど、そんなことが僕に出来るだろうか? もし僕が武器弾薬や爆薬を大量に所持した経験豊富な特殊部隊員なら、発電所の破壊は可能かもしれない。しかし僕は高校生で、人間相手に戦うのだって今日が初めてだ。武器だってクロスボウに斧やナイフ、とてもじゃないが建物を吹っ飛ばせるような装備なんて持っていない。

 青年からダイナマイトを一本くらい拝借しておくべきだった、と今さらながら後悔する。もっとも素人の僕じゃ自爆するのがせいぜいだったのかもしれないけど、それでも手段があるのと無いのじゃ大違いだ。


 だがまあ、そこは何とかするしかない。最悪、発電機を一つ一つ文字通り叩き壊していく羽目になるだろう。それでも村への電力供給が絶たれれば、僕らが有利になる可能性は大きい。その可能性に賭けるしかない。




 道路脇を姿勢を低くして移動を再開すると、前方に農業用のビニールハウスの群れが見え始めた。しかし今は休耕中なのか中で農作物を耕している様子はなく、うち捨てられたのかビニールがズタズタに裂け、金属の骨組みだけになっているハウスもある。

 しかしそれらが障害物となってくれたおかげで、一々地面に伏せたり姿勢を低くすることなく移動することが出来る。道路はいつの間にか砂利道からアスファルトの舗装路になっていたが、そちらを歩く気にはなれなかった。



「ん?」


 雑草が伸び放題になったビニールハウスの中を移動していると、透明なシートの向こうで何かが動いたような気がした。その場に伏せて匍匐前進の真似事をしながら前に進み、出入り口を覆うシートをそっと持ち上げて外の様子を確認する。

 ビニールハウスのすぐ隣には十字路があり、東側から懐中電灯を持った二つの人影が近づいてくるのが見えた。やはり守備隊員らしく、一人はクロスボウを携えている。そしてもう一人の手に握られているのは、リボルバータイプの拳銃だった。


 二人組は道路の左右に立ち並ぶビニールハウスの中を一つ一つ覗き込みながら、こちらに近づいてきていた。入り口を覆うシートを捲り、中を懐中電灯で照らしている。ビニールハウスの数が多いせいで大雑把な確認をしているようだが、まず間違いなく僕の隠れているビニールハウスにもやって来るだろう。


「やばいな……」


 相手は二人組、しかも一人は拳銃を持っている。正面切って戦うには分が悪すぎる。僕は姿勢を低くしたまま急いで引き返し、ビニールハウスの外に出た直後、二人組がビニールを捲る音が聞こえた。


「いないな」

「だからこっちには来てないんじゃないか? あのガキはもう村の外に逃げたんじゃ?」

「かもしれないが、用心するに越したことはないだろ」

「残りの3人もまだ逃げてるんだろ? 応援に行った方がいいんじゃないのか?」

「馬鹿言うな、無断で持ち場を離れられるわけないだろ。俺たちの仕事はこの辺り一帯の監視だ、連中の追跡じゃない」


 そんな声と共に、透明のビニール越しにぼんやりとした光の輪が浮かび上がる。もしあのまま二人組の接近に気づいていなければ、今頃見つかっていたかもしれない。

 しかし、これで下手にこの場から動くことは出来なくなってしまった。発電所のある南へ行くには道路を横断しなければならないが、そうすればさすがにあの二人組も気づくだろう。二人組はこの辺り一帯のビニールハウスを確認した後、すぐ近くの十字路に移動してしまった。真っ暗闇なら連中から離れて移動すれば気づかれなかっただろうが、生憎今は全ての街灯が灯ってしまっている。そんな状況でまっすぐで見通しのいい道路を渡ろうものなら一発で見つかってしまう。


「どうすっかなあ……」


 おまけに周囲が明るいせいで、この場から動くことすらままならなくなってしまった。今は地面に伏せてビニールハウスの影から十字路の二人組の様子を伺っている僕に、連中が気づいた気配はまだない。明るい環境下でもじっとしていれば周囲の風景と一体化出来るが、動いた瞬間二人組は僕に気づくだろう。犬よりも大きな物体がのそのそ動いていたら、誰だって気づく。


「やっちゃいますか」


 どの道連中に気づかれずにここを通り抜けたとしても、背後から襲われるかもしれないという脅威が常に付きまとうことになる。もし僕が発見された場合、挟み撃ちになることだけは避けたい。その前にここで二人組を始末しておけば、僕は安心して発電所の破壊に乗り出すことが出来る。

 それに武器がクロスボウと斧だけ、というのも心許なかった。何せ相手は連射の出来る短機関銃サブマシンガンまで持っている、こちらの飛び道具がクロスボウだけである以上、戦闘が起きたら僕に勝ち目はない。その点拳銃でも持っていたら、戦力差をわずかにだけど縮めることが出来るかもしれない。



 しかし、飛び道具を持つ二人組を、どうやってまとめて倒すかが問題だ。もし片方が生き延びれば確実に増援を呼ぶだろう。そうなればたちまち僕は包囲されて一巻の終わりだ。連中が増援を呼ぶ余裕を与えずに始末しなければならない。

 第一に狙うべきは拳銃を持った男だろう。もし銃声が鳴り響けば、何かあったと見なされて増援がやって来る可能性がある。それに拳銃はクロスボウと違い、一々再装填せずに数発撃つ事が出来る。もし撃ち合いになった場合、僕が不利に陥るのは避けられない。


 最初に拳銃を持った男を倒し、もう一人がパニックに陥っている間に素早く矢を装填して射殺する。それが僕の立てたプランだった。訓練された特殊部隊員でも、突然襲撃された場合は10秒間ほど隙が生まれる。ナオミさんはそう言っていた。

 しかし既に死者が出ていることもあって、今の二人組は確実に僕のことを警戒しているだろう。もし一人を射殺しても、すぐにもう一人は立ち直って応援を呼ぶなり応戦するなりするかもしれない。二人目を倒すまでの猶予は5秒といったところか。それ以上時間を掛けたら応援がやって来ると思わなければならない。



 二人組はすぐ目の前の交差点をうろうろしているだけで、どこかに行く気配は無かった。それぞれが別の方向を向いていて、道路を横断しようとするものがいればすぐに見つけるだろう。

 かといってさっき守備隊員たちを倒した時のように、石を投げて気を逸らすというわけにもいかない。あの時は周囲が暗かったから上手くいったのであって、伏せたままでは上手く石を投げられないし、どうしても動きが大きくなる。街灯が灯っている今、投げた瞬間に見つかるのがオチだ。


 やはり一人が別の方向を向いている隙に、拳銃を持っている男を射殺するしかない。もう一人の武器はクロスボウだ、最悪撃ち合いになっても互角の戦いを繰り広げられる。

 僕はゆっくりと、手にしたクロスボウを構えた。肉抜きされた金属製の銃床ストックをしっかり肩に当て、ドットサイトを覗く。レンズの中心に浮かぶ赤い光点を、拳銃を持つ男の胸に合わせた。

 距離は30メートルかそこら、充分射程圏内だ。わずかに身じろぎしてさらにビニールハウスの影から顔を出した僕は、クロスボウを持った男がこちらに背を向けた瞬間に引金を引いた。



 ビン! と弦が鳴る音と共に矢が射出され、拳銃を持つ男の右胸を貫いた。その瞬間男はいったい何が起きたのかわからないという顔をして、突然自分の胸に生えた矢を見つめていた。


「ぐっ……!」


 肺を貫き血が気管を逆流したのだろう、口からコップ一杯分はあろうかという量の血を吐き出し、男は地面に膝をついた。隣にいたクロスボウの男がその音に気づいて振り返り、血を吐いて地面に倒れる仲間を見て目を見開く。一瞬棒立ちになったその隙を逃さず、僕は素早く弦を引き、矢を装填して狙いを定めた。



 再び引金を引く。が、クロスボウを握る手に力が篭もってしまい、引き金を引く瞬間僅かに狙いがぶれた。しまったと思った時には既に遅かった。放たれた矢はもう一人の男の眼前を掠め、その背後にあったビニールハウスへと飛び込んでいた。


 さすがに目の前を矢が飛んでいって何が起きたのかわかったのだろう。矢が飛んできた軌跡を辿るように男がこちらを向き、目と目があった。見つめ合っていたのは一瞬のことで、気づいた時には男はクロスボウを構えると、僕に向かって引き金を引いていた。

  狙いも定めずに撃ったせいで矢は僕の遥か頭上を飛び越えていったが、それでも確実に僕の存在と居場所は男にばれた。舌打ちし、素早く矢を再装填しようとする。しかし次の瞬間、男は思いもよらない行動に出ていた。


 クロスボウをその場に放り捨てると、傍らに倒れる仲間に飛びついたのだ。見れば仲間が握る拳銃を、手から引き剥がそうとしている。クロスボウを一々再装填している間も惜しいと思ったのだろう。しかし仲間が持っている拳銃は弾が装填されているから、クロスボウを再装填するより早く彼は僕を攻撃できる。

 もう一人が死体から武器を取るという行動を想定していなかった僕は、自分の迂闊さを呪った。しかし放っておけば男は拳銃を手にするだろう。そうなれば男が一転攻勢に出るどころか、銃声を聞いた守備隊が集まってきてしまう。


「クソッタレ……!」


 僕は立ち上がり、男に向けて走り出した。クロスボウはスリングで肩からぶら下がったままだが、こっちも再装填している時間が惜しい。外したら次の発射まで時間がかかるクロスボウと違って、拳銃は弾が装填されている分は引金を引き続ければ間を置かずに撃ち続けられる。

 ベルトのホルダーから斧を取り出し、距離が10メートルを切ったところで大きく振りかぶる。その時には既に男は仲間の手から拳銃を引き剥がし、自分の右手に収めていた。


 黒くて丸い、小指が入るかどうかも怪しいほど小さな銃口がこちらを向く。もし男が引金を引けば、その銃口から飛び出したわずか数グラムの鉛玉が僕の命を奪う。

 銃口を向けられるよりも一瞬早く、僕は男目掛けて斧を投擲していた。突然斧を投げつけられた男は引金を引くよりも、無意識のうちに自分の身を守ることを優先したのだろう。とっさに顔の前に掲げられた男の左腕に、回転しながら斧が直撃した。


 運が悪いことに、当たったのは金属製の柄の部分だった。しかし刃が当たらなかったとはいえ1キロ近い金属の塊を勢いよくぶつけられたも同然で、斧が直撃した男の腕からは枝を踏みつけたような何かが折れる乾いた音が鳴った。

 悲鳴と共に男が左手を抑え込むが、彼はまだ闘志を失っていなかった。苦しげな表情をしつつも拳銃を構えようとする男だったが、その時には既に僕と彼との距離はほとんど開いていなかった。


「うぉらっ!」


 気合の声と共に、握った矢を思いきり男の顔面目掛けて振り下ろす。クロスボウのホルダーから取り外した矢は、それ単体でも十分な凶器になる。

 振り下ろされた矢は男の左目に深々と突き刺さった。眼球を割り、頭蓋骨も貫通したのだろう。何かが砕ける鈍い感触が矢を握る右手に伝わり、男の身体が大きく痙攣した。鋭く尖った鏃は脳に達したのか、左目から赤い涙を垂れ流す男は地面に倒れると、小さく痙攣し始めた。


 しかし彼は既にあの世に旅立ってしまったようだ。左目から矢を生やし地面に倒れる男は、立ち上がることも銃を撃ってくる気配もない。身体は動いているが、死後痙攣だろう。クロスボウで右胸を貫かれたもう一人も肺に穴が開いて呼吸できなくなったのか、やはりこちらも死んでいた。

 これで4人殺したことになる。しかし最初の一人を殺した時のように、僕の心は穏やかなままだった。道端に転がっている石ころを退けたように、僕は僕の生存を邪魔する彼らを殺した。それだけだった。



 再び遠くで鳴り響いた銃声で我に返った僕は、倒れた男の手から拳銃を取り上げた。さっさと発電所をぶっ壊して街の明かりを消さなければ、僕だけでなくナオミさんたちも危ないままだ。

 男が持っていたのは警察用のリボルバーらしい。短い銃身の後部に、レンコン状の丸いシリンダーを備えている。幸運なことに僕は以前、ナオミさんから警官の死体などから拳銃を入手した場合に備えて、銃の構造と使い方を教わっていた。


 教わった通りにグリップの上のレバーを押してシリンダー左に倒すと、振り出されたシリンダーに装填された5発の拳銃弾が露わになる。シリンダーを戻し元々拳銃を持っていた男の死体を弄ると、ポケットから指先ほどの大きさの拳銃弾が20発ほど見つかった。数十人相手にたった20数発しかないのは不安だが、それでも銃があるのと無いのじゃ大違いだ。でも発砲した場合自分の居場所を敵に教えることになるので、まだまだクロスボウは役に立つだろう。拳銃弾をポケットに仕舞い、僕は何か使えるものが無いか死体を漁った。


 しかし持っていく価値がありそうなのは、たった今殺した男が持っていたクロスボウの矢くらいだ。ナイフは持っているし、無線機もさっき奪った。クロスボウは二丁もいらない。地面に落ちた斧をホルダーに戻した僕は、死体の目に突き刺さった矢に手を掛けた。


 新しく予備の矢も手に入ったし捨てていこうかと思ったが、この先どれだけの敵を相手にするかわからない以上一本でも矢を無駄にするわけにはいかない。回収できるのなら回収しておく必要がある。もし銃弾がたっぷり手に入れば、話は別なのだが。


「うえ……」


 力を込めて引っ張ると、矢は潰れた眼球ごと死体の眼窩から抜けた。真っ赤に染まったゴルフボールと言った体の眼球の先には、赤だかピンクだかわからない色の神経の束が繋がっている。死体は今まで色々見てきたが、矢を引き抜くためとはいえ死体を損壊するのは初めてだ。思わず顔をしかめた僕は、そのまま矢を上に持ち上げた。

 鏃に返しはついていないので、引っ張ればあっさりと矢は抜けた。伸びきった神経の束とそれに繋がる眼球が地面に転がり、今まで矢が刺さっていた穴からねばねばした液体が零れ落ちる。死体の服で矢に付いた血や体液を拭い、弦をコッキングしてクロスボウに装填する。


 銃を手に入れたとはいえ、まだまだ油断は出来なかった。これまでに4人倒したが、これから先も上手くいくとは思えない。特に発電所は警備が厳しいだろうから、確実に銃撃戦に発展するだろう。


 リボルバー拳銃をベルトに挟むと、僕は発電所のある南西方向へと走り出した。銃声は尚も村の中心部から響いてきている。ナオミさんたちに脱出のチャンスを与えるために、一刻も早く発電所を機能停止に追い込まなければならない。

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