一日目 1

 椅子のようなものに座っているのだけは認識できた。

でもわかることはそれくらいだ。周りは真っ暗で、椅子から降りるとどこまでも落ちてしまいそうだ。 

 ここはどこなんだ?

 そうか。ここは夢の中なんだ。

 ん…?

 僕から3メートルほど離れたところに、誰かいる。女の人みたいだ。

 年齢は…見た目的には20くらい?僕と同じくらいかな。そういえば大人になってから、若い女の人なんて見ていないかもしれないな。外に出ていないというのもあるかもしれないが。

 いつか見た絵本の女神そっくりの恰好をしている。

 そんなことを考えていると、女の人が話し始めた。

「いつか見た絵本の女神そっくりの恰好をしている」

「え?」

「そう考えたのでしょう?」

「え…はい」

何だこの人は。僕の考えを読んでいるようだ。あ、でも夢なのか。

「自己紹介をしましょう。私はモイライ。運命を司る女神です。」

 夢にありがちな設定だ。女神が出てきて、僕を知らない世界へ連れていく。その世界ではゲームのような力が使えて、俺TUEEEE状態。いつもいいところで目が覚めてしまうのだが、今回もその類のものだろう。いつものルートで行くと、ここで女神は僕に運命を突きつけるところだ。

「なるほど。この年代の人間はそんなことを考えているのですね」

「は?」

何だこれは。いつものルートと…

「いつものルートと違う。そう考えているのですねのですね。」

考えをジャックするように、女神が言う。

気味が悪い。何なんだこの女神は。

「失礼ですね。気味が悪いとは」

夢だからいいけど、少し怖くなってきた。

「まあいいでしょう。単刀直入に言いましょう」

なんだこの女神は。

「あなたの住む地球が破滅します。でも地球はなくなりません。あなたはその身代わりに選ばれました」

「はぁ?」

何言ってるんだ。

「まあそんな反応をすることはわかっていました。まずあなたが今考えている、『これは夢なのか?夢じゃなかったとしたら、もっと訳が分からない。そしてこの女神は何なんだ』という疑問に答えましょう。まあこの中の一部しか答えられないでしょうが」

それも今ちょうど考えていたことだ。まずい、マジで怖くなってきた。

「まずは『これは夢なのか?』という質問について答えましょうか。そうですね…夢だけど、夢じゃない、とでも言っておきましょうか。」

「えっとそれはつまり…」

「私はいまあなたの夢に無理やり入り込んで私は話をしています。あなたは夢を見ていますが、私はあなたの夢の中に実際に存在している…まあわかりにくかったでしょうか。」

この人の話が本当だとしたら…

背筋がぞっとした。

でも。

「私が何者かについては、後々解ることですよ…って聞いてます?」

「夢なんだろ?」

「は?」

「夢なんですよね、これって…僕もこんな夢見るなんて…」

「はあ…これだから人間はめんどくさい…」

女神モイライは、やれやれといったかんじでこちらに歩いてくる。

そして。

「えい」

拳を握りしめ、突然僕を殴った。

「えっ…うわちょっと何すんですか痛いな…」

女性で腕も細かったが、結構痛い。だがモイライはにこりとして言った。

「今なんとおっしゃりました?もう一度言ってみてください」

「だからあなたがいきなり殴ってきて痛い…って…」

モイライの優しい笑顔が、少し黒さを増した。

。それはこれが夢ではないことを意味する。僕の顔から、血の気が引いていくのを感じた。

灰色の笑顔のまま、モイライは言う。

「もう少し話をしましょう。あなたと全世界の命にも関わりますから」






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僕と神さまと地球の七日間 しか @sika3hotori

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