22センチの恋
青空はるま
小さな君と出会いの季節
雨が降っていた
サーッと降りしきる、大雨のように
私は、雨が止むまで本屋に立ち寄っていた
これといって欲しい本がある訳では無いけど
ついつい好きな作家の本を立ち読みしてしまう
「…あ、新作…いつの間に出てたんだ」
ヴーヴーヴーヴ…
バイブ音が鳴り響く
「丁度いいとこだったのに…はい、もしもし?あぁ、編集長?…え?企画が通った?本当ですか?!」
電話の相手は私の働いている会社の編集長。
マーケティングの新企画の件についての電話らしい
「えぇ、はい…はい、わかりました。では明後日にでも企画書をまとめておきます、ありがとうございます。失礼致します。」
ピッ
「やった…!!ってわぁっ?!」
嬉しさのあまりか、本を落としてしまう
「いけないいけない…ん?」
視線の先には真剣に本を読みながら考えてる小さな青年が居た。
年齢は近そうだが、若干年下そうに見える。
身長差はざっと22センチくらいだろう。
「お客様?大丈夫ですか?」
「え、あ、はい!!すみません!!」
私は新作の小説を手に取り急ぎ足でレジに向かう
「…?あれ、これ…」
俺は何かを拾った
USBの様な媒体が落ちていた
もしかしたらさっきの女性かもしれない。
まだ本屋に居るかな?
居なかったらレジか交番にでも届けよう。
「…あれ?ない、ない…!!」
私は捜し物をしていた。
会議で使う企画書の資料が入ったUSBを落としてしまった。
会社の個人情報だ、誰かに盗まれたりしたら大変な事になる。
そうなる前に至る所にそれがないか捜していた
「あっ」
案の定、血相を変えて捜している所に遭遇した
よかった、まだ居て…
どう声を掛けようか迷っていたが
俺は
「あの、これ…貴方のですよね?落としましたよ?」
よくわからない日本語になってしまったが
そう声をかけた
「え、あっ…!」
さっきの…
確かに彼の手には大切なUSBがあった
拾ってくれたらしい、感謝を言わなければ
「あのっありが…」
顔を上げた瞬間
私はドキッとしてしまった。
「…とう、ござい、ます…」
「?どういたしまして」
彼の表情が、さっきの真剣さと違って
とても、爽やかな笑顔で…
虜になってしまった。
「じゃあ、俺はこれで」
そう言って後ろを向き去っていく彼
私は、一目惚れなのか、彼に…恋をしてしまった
「名前…聞いておけば…ッッ!!」
またバイブ音が鳴り響く
電話先は…
「…はい、千晴です。お疲れ様、竣哉さん…うん、わかりました。では自由が丘に…向かいます」
婚約者だった。
私の名前は山咲千晴。21歳、社会人4年目で部長クラスまであっという間のトントン拍子に昇進していた会社員だ。
「…はぁ…やだな…行きたくない…」
私には一回り上の婚約者が居る。
名前は大谷竣哉さん、歳は34歳で…職柄は大手企業の若手社長だ。
とても優しくて、頼りになると評判の人らしいが
それは表向きであって…
彼と一緒に同棲し始めて半年が経つ
彼の性欲が日に日に酷く、週に何回かは私を抱く
疲れている時もどんな時もお構い無しに
本当の愛ってなんだろう
そう思うようになってから彼に冷めてしまい
遠ざけようとしていた
恋愛ではなく、政略結婚だからということもあるけど
今日も抱かれる
そう怯えながら
私は彼との待ち合わせ場所
自由が丘に向かう
22センチの恋 青空はるま @hlm_9246
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