第3話 空振ったナイアくんジョーク
「…」
『あっちょっと待ってください待ってください』
シスターが見なかったことにして彼の横をサッと通り抜けようとすると、男性は慌てて彼女の肩をつかんだ。
「…何するんですか」
『…冗談ですよ、ナイアくんジョークですよ???
そんな顔しないで下さいよ??ほらどうぞ、寒いんでしょう?』
ナイアくん、と名乗る男性は、ガン睨みする彼女に、彼の着ていた変わった形の少しもこもこした上着を頭から被せた。
「わっ…っぷ、これ…って、あ、貴方、そんな格好じゃ死んじゃいますよ!?」
シスターは視界が開けた瞬間、素っ頓狂な声をあげた。
にっこりと笑みを浮かべている彼の格好は、とても冬に出歩くようなものではないような薄着だったのだ。
『ふふ…私はこれ位あれちょっと思ってたよりもさむ…』
始めはドヤ顔をしていた彼だが、段々と顔が青くなり、最終的には言葉が消えてしまった。
「え!?し、死んじゃダメですっ、早く着なさいっ!ほら!!」
慌ててシスターが彼の上着を押し付けるようにして返すが、時既に遅し、彼は上着と一緒に冷たい地面にべちょりと落下した。
「あ、ああ!!?ち、ちょっと…!!!
…と、とにかくどこか暖かいところに運ばなきゃ…!」
笑顔のまま真っ青になり、ぴくりとも動かない彼を、彼女はゆっくりとした動作で背負い、さらに重くなった足取りで彼女の家、教会へと向かった。
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