第10話 事件発生
「芹香ちゃん、いる!?」
ドアをドンドンと叩く音が聞こえたので、私はドアを開けた。
「横山さん? どうしたんですか、そんなに慌てて」
一体何があったのだろうか。
「大変なの! 高山くんがいなくなったんだって!」
「え!? 高山さんが?」
「桑原さんが三十分経ってもお風呂から戻ってこないから探しにいったらお風呂には誰もいなくて、桶川くんと一緒なのかなと思ったら桶川くんも知らないって……」
横山さんは激しく動揺している。今日出会った人とはいえ、こんな不気味な館で人がいなくなったとなればこうなるのも無理はないだろう。
「他の人も知らないんですか?」
「うん。他の皆にも聞いたけど、誰一人知らないって。とりあえず一度皆を広場に集めてるから、一緒に来て」
「わかりました」
とにかく緊急事態だ。早く高山さんの行方を掴まなくては。
「お、探偵さんが来たか」
桑原さんが私たちに気づいた。
「高山さんがいなくなったって本当なんですか?」
「ああ。とりあえず俺と桶川で二階を手分けして探したが、見つからなかった」
「まだ一階は調べてないから、もしかしたら一階にいるかもしれないけどね」
そう言う桶川さんの表情は暗い。友人が突然いなくなったので心配なのだろう。
「なら、皆で二手に分かれて一階を探しましょう」
男性陣と女性陣で分かれ、高山さんを探し始めた。
「ダメだね。どこにもいないよ」
一階をくまなく探したが、高山さんを見つけることはできなかった。
「ほんと、どこにいったんだろう?」
「案外、一人で外に逃げ出したとかじゃねえの? この館にいるのが不安になったとかで」
「でも、高山さんて、この館に来たかったんですよね? それなのに一人で逃げるなんておかしいと思いませんか?」
「好奇心で来たはいいけど、途中で怖くなったとかで逃げ出したかもしれませんよ」
「あいつはそんな臆病なやつじゃないんだけどね」
各々が高山さんの行方について語っている。
確かに一階は全て探したが、見つけることができなかった。
いや、まだ一つだけ探していない場所があった。
「もしかしたら、メモリアルルームにいるのかもしれません」
「メモリアルルームって、あの鍵がかかっている部屋だろ? どうやって入ったんだよ」
桑原さんが当然の疑問を投げかけてくる。
「この館で鍵を見つけて中に入ったという可能性がありますよ」
私が言う前に、内田さんが意見を述べてきた。
「そんな簡単に鍵が見つかるか? いくらなんでも都合良すぎないか? それに、何のために中に入ったんだ?」
「好奇心で入ったかもしれないですね」
「確かに、鍵がかかっている部屋って入ってみたくなるよね」
「芹香ちゃんはどう思うの?」
阿部さんが私に話を振ってきた。
「……あくまで私の予想ですけど、高山さんが一人であの部屋に入ったとは考えられません」
「どうして?」
「仮に、内田さんの言うとおりに鍵を見つけたとしても、少なくともそのことを友人の桶川さんには言うと思うんですよ」
「そんなの、あの部屋に財宝か何かが隠されてると考えて独り占めしようと思ったのかもしれないぞ」
「確かに、その可能性もあると思います。でも私は、高山さんがそんな人だとは思いません。いなくなったのには何か理由があるのだと思うんです」
「君と高山は、今日初めて会ったんだろう。それなのに、どうしてそんな人だとは思わないんだ? 人間なんて、裏表があって当たり前だろう?」
その言葉に、私は何も言い返せなかった。
「言いすぎですよ、桑原さん。僕も高山がそんなやつだとは思いません。あいつとは長い付き合いですし、あいつのことは僕が一番わかっています」
「それで、芹香ちゃんはどんな理由があって高山くんがいなくなったと考えるの?」
横山さんが私に尋ねてきた。
「……もしかしたら、高山さんは何か事件に巻き込まれたんじゃないかと思います。たとえば、誰かに襲われたとか」
私が言葉を発した後、一瞬だけ場が静まった。
しかし、すぐに桶川さんが反論してきた。
「襲われたって、誰に? ここには僕たちしかいないんだぞ。まさか、僕たちの誰かが襲ったとでも言うのか?」
「もうひとつ、可能性はありますよ。私たち以外の人物が、この館に潜んでいるかもしれません」
「それって、もしかして仮面騎士のこと!?」
横山さんが言った言葉で、再び場が静まり返った。
「な、何言ってるんだよ。あの殺人鬼がこんなところにいるわけないだろ。だいたい何でそんな話になるんだよ」
「私たち、さっきそのことを話してたんです。この館は仮面騎士が拠点として使ってるんじゃないかって。だって、仮面騎士が事件を起こしてるのって、この山付近でしょ?」
横山さんが懸命に説明する。
「た、確かにそうだけどさ。話が飛躍しすぎだろ。もうちょっと冷静になろうぜ。とりあえず、もう少しだけ待ってみよう。もしかしたらひょっこり出てくるかもしれないし」
「じゃあ、一時間後にまた広場に集まるってのはどうですか? 生存確認のために」
内田さんが提案する。
「生存確認ってのはあんまりいい気分じゃねえけど、そうした方がいいかもな。じゃあまた一時間後に集まろうぜ」
桑原さんの言葉で、一旦解散した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます