第6話「ポチ、ふたたび」

ポチは尻尾を振って待ち構えている。

仕方ない、遊びの時間はもう終わりだぜ?ポチ。


といってもどっから手をつけるのか…さすがのポチも今回の暴落にはなすすべもなかったらしい。

ポチはどうも息抜きがしたいらしく、宇宙規模の星間惑星再構築プログラムも放置して、タコヤキ屋を始めたいという。

まあ、どっちも丸いの動かすから、似たようなものといえば違うことはないかもしれない。が。

大きさがちょっと違うような気もする。

が。


しかたない、俺も作務衣に身を包み、タコヤキをじうじうと焼いている。

ポチも焼きたそうだが、この星の保健所からNGがでちゃうので仕方ない。

そう言うところだけはコンプライアンスなところがイカスんだが、

まあ、面倒だから俺にやらせたいだけだろう。


3ヶ月もやると随分人気も出て、売り上げもかなりの額になってきた。

久しぶりに株価など見遣ると、タコヤキの売り上げ曲線と、

先進8カ国の株価平均のグラフがぴったり連動している…。


おい、ポチ。

なにやっとる。キサマ。


そして、ある銀行の頭取がやってきた。

融資をしたいと言う、この御時世に商魂逞しい。

関西人らしく、挨拶は

「もうかりまっか~?」

だ。頭取なのに。まったくこれだから関西人は…


ポチは真顔でシラッと答えた。


「ポチポチでんなぁ。」


おい、ポチ。

それが言いたかっただけか、キサマ。


ポチの気は済んだらしい、店を畳むという。

なにかの物理方程式を弄ってるから、この店が閉まると、

また世界の経済は暗黒に包まれるのだろうが、

まあ、満たされたポチにとってはどうでもいいのであろう。


ポチが尻尾を振っている。

また散歩の時間だ。


仕方ない…、俺は千枚通しを捨て、再びポチと散歩をはじめた。



よくよく考えれば、千枚通しと言えどちょっとした凶器なのだ。

捨てた千枚通しが、不幸なことにポチの尻尾に見事にジャストミートしてしまった。


ポチはなにすんねん!的な顔で俺をにらむと、尻尾を振って千枚通しをふり飛ばした。

もはやよく考える必要はないのだが、千枚通しと言えどちょっとした凶器だったのだ。


飛んだ千枚通しが、不幸なことに俺の後頭部を直撃した。


いや…これは不幸ではない。


ポチがニヤニヤしている。


わざとだ。


深くは刺さっていないようだが、

不覚だった。


おっと。

これで下げてしまっては、貴重な読者(1名)を、また1年待たせてしまう。

折角だからもう少し行数を稼がねば。


俺は訳の分からないモチベーションで、このままポチの散歩を続けようとした。

だが、千枚通しを抜こうと手をかけるほんの1秒もかかることなく、

俺の意識は深遠なる時の流れと空間の織りなす豊かな恵みと大自然の神秘の世界へと導か



どうも。はじめまして。


ああ…。

これ文字だけだからわかりにくいですよね。

アニメ化なんて絶対にされる事はないので、説明しますと、

ポチです。


下水で美味しいラーメン屋探したり、惑星間補完プログラムを完成直前に放置したり、タコヤキ屋の売り上げを先進8カ国の株価に連動させちゃったり、赤いポルシェが妙に似合っちゃったりする、ぱっと見はかわいいワンコです。


きゃはっw


…キモいですか?


たまには、主人公らしいモノローグを淡々と語りたく「俺」を眠らせたのですが、なんだかずいぶんな扱いですねぇ…。


てへぺろっw


…キモいですか?


ぱっと見、かわいいワンコですよ。

アニメ化など、間違ってもされませんが。


さて、「俺」が眠っているのは、おそらくあと25行と30文字です。

手短にモノローグしましょう。


ヒトリゴトなんてのは、あまり聞かせるものじゃないですが、まあ仕方ないんで聞いてください。

私の名前は「ポチ」ぱっと見、かわいいワンコです。

アニメ化なんて絶対にされる事はないので、説明しますと、よくいる雑種の茶色で、しっぽがくるっと大きめ、BWHはヒ・ミ・ツw


ふふっw


…キモいですか?


あと13行なのに、ずいぶん改行を浪費しちゃいましたね。




あと10行♪


あっはん♪


…キモいですか?


ああ、こんなことしてる間に5行になっちゃったじゃないですか!

私のこれからの活躍をたった4行で説明するなんて、銀河英雄伝説を10秒でアニメ化するぐらい無茶なハナシですよ。

もっとも、10秒で括る事は簡単ですよね。

「スッゲー長い、超長い。どれくらい長いかっていうと、図書館に全巻収まんないくらい。」

ていうかね、結局こんな事してるから1行がすっごく長くなっちゃうわけなのですよねぇ。ああ、終わっちゃった。ていうか「俺」には黙ってましたが、私、メスなんです。かわいい?うん。知ってる。ていうか、これで1年引っ張るのかしら。迂闊にマイミクなんか増やしちゃったらこれ読まれちゃうのね。いやーん、まいっちんぐ。っていうかそろそろ「俺」が戻ってくるから、じゃあ、またね~(はぁと)





俺は何か妙な夢をみていたような気分で深遠なる時の流れと空間の織りなす豊かな恵みと大自然の神秘の世界へと導かれかけた崖っぷちから生還を果たした。


それにしても千枚通しが後頭部にグッサリなんてこれがお笑いSFじゃなかったら死んでたぞ。全く…。


ポチはまだニヤニヤしながら俺を見ている。


そうだ、散歩の続きだ。


今度はなにかもう少し色気のあるグローバルな世界を目指したいらしい。

イロケってなんなんだか、ハードヴォイルドな俺には理解に苦しむが、まあ、それはそれ、俺の生き様には関係ないだろう。


ポチはアタマを掻きながら舌を出した。

そりゃなんだ?

なにかの呪いか?


そうだ、散歩の続きだ。


ポチはまたニヤニヤしながら俺を見ていた。


気がつけば2年。


ええ、2年。

毎年恒例だったはずなのに、2年。


どうも千枚通しを抜いたキズにオロナミンCを塗ったのが敗因だった。

なにかやたら染みると思ったら、オロナインを塗るのが正しかったらしい。

おかげで完治するのに2年。


まあ、それはそれでいいだろう、ポチも別段気にはしていない………


いや、睨んでる。

こりゃ、睨んでる。

すっげぇ、睨んでる。




きゃぁ。




あ、俺、ハードヴォイルドだったんだ。


しかし、アレだ。

プロフィールに、こんなパルプフィクションっていうか

ペーパバックっていうか、三文小説を載せるのも、

まあアレだ。


モノズキも居た者で、このプロフィールを読んだという、

とある出版社の編集という方からファンレターをいただいた。

どうも十万五千円を支払うと、製本して書店流通しますから、

一冊分がっつりと、ポチの英雄伝を書きませんか、と。


ポチはそっぽを向いてしっぽを向けている。

そんな瑣末な事、興味もありゃしねぇって態度だ。


まあ、コイツがやらかしたことを書けば、一冊どころか

図書館を埋めるに十分なエピソードはあるんだ、

あるんだが……。



めんどくさい。



例えば、コイツがやらかしたことの一例を挙げると、

散歩の途中でポツポツと雨が降り出して、

ハードヴォイルドな俺様はカサなど持ち合わせる事もなく、

よしんば持っていたとしても、

見た目かわいいだけのわんこに、

それを譲ろうはずもない。


ポチはもちろんそんな事は知っている、

そして楽しみにしている散歩を途絶えさせる

この無粋な雨に俺がそそくさと帰ろうとするであろうことも知っている。


こんな時、普通の見た目かわいいだけのわんこなら、

素直に従い帰路につくのが当然であり自然の摂理であり円還の理であり

ああそう言えば確定申告もしなくちゃなであり

とっとと帰ってしわくちゃな領収書をぺたぺたしなくちゃなである。


腹も減ったし。


これらの条件が揃えば、何の迷いもなく帰路につくのが

人類としての当然の権利であろう。

見た目かわいいだけのわんこに権利などないのだ。


帰るぞ。


と踵を返そうとしたその刹那。


恋に墜ちた。


え。


何故に突然フォーリンラヴ?


いやでもまてこれは愛だ。

恋なんかより濃い、これは葵、いやそれは青より以出て、

いやそんな、もう、あなた愛してますからついていきます。



きゃあ。



この小雨降る街をどうしても散歩を完結させたかったポチは、

実はメスだということを利用して、

俺にフェロモンを嗅がせる事で、

この道を思うままに追随させる手法を執ったらしい。



ああん。もう。さからえないぃぃぃ。



しかしあれだ、俺はハードヴォイルドな人類のダンディなメンズである。

略してダンメンズだ。

何を輪切りにしてるんだ?


いや、そんな事より、なぜ、わんこに、

フォーリンラヴしなくちゃなりませんか?

ならなきゃいけないのですか?

義務ですか?納税ですか?


ああ、確定申告ッ!


萌え盛る恋の烈情に、気付くのが遅れたが、

おれの目線がやたら低い。

推定身長185cmの視界ではない。

これは地平からおよそ45cmといったところだ。


へ?


俺は、ポチに仕掛けられた、なにかの罠、

まあ、世間ではそれを分かり易く、

魔法だなどとヌカすのであるが、

この魔法と言う言葉から連想するのは

やはり魔法少女であるが、

この節を詳細に述べると、ノベル化しなくちゃならない。


やたら長いタイトルで。


さて、書き飽きてきたので、

ここでプレゼントコーナー。


ここまで熱心に読んでくれたアナタ!


メッセージを送ってくれれば、

もれなくおいしいラーメンをご馳走しますよ。

キーワードは「ラーメンおごってくれるって本当ですか?」です。


では気を取り直して、フォーリンラヴの続き……

いやまてこらおいふざけ


と、ここまで考えたところで散歩は終焉を迎え、

俺の推定身長185cmの視界に世界は回帰した。


よかったよかった。

まあ、びしょ濡れではあるのだけれど。



と、まあ、これくらめんどくさいヤツなのである。


まあ、この二匹の散歩中にも、ダース単位で

おもしろエピソードがあるのだが、

もはや誰も読んではおるまい。

いるとすれば十万五千円をせしめようとしている

●●文社のアナタ!アナタですよ!!


と、ここまで夢中になって書いていたら

俺様のお気に入りのハードヴォイルド番組、

「今週のハードヴォイルド予報」(バラエティ)が

終わってしまっているじゃないか!


くそうくそう!


まあいい、次の番組はお気に入りの、

「どきどきハードヴォイルドキャッチは俺の妹が機動戦記」(アニメ)

だ、10話という、最終回まであと2話という重大な節目(水着回)でもある。

正座して見なくてはなるまい。

まずはCMだな。

ユニ●ロか……冒頭のCM長いんだよな……

これだから日●テレビは……。




ん?




なんだこのCMは……




「ポチ日記」重版出来!

アニメ化決定!!




ポチはどうも、詐欺商法が嫌いらしい。


俺が執筆している間に、またなんか世界線とかパラレルワールドとか

便利で安易でガッカリなツールを活用して、

俺を本物のハードヴォイルド小説作家に仕立ててしまったらしい。



まあ、どうせすぐ飽きるだろうし、

と言っても折角のお膳立てだ、

俺はモンヴランを手にして、お気に入りの原稿用紙に向かった。


いやその前に

「どきどきハードヴォイルドキャッチは俺の妹が機動戦記」(アニメ)

見るけどな。



ポチはニヤニヤしながらそっぽを向いてしっぽを振っていた。

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