第5話「R25の光景 〜主婦R子編〜」


ここはとある地下鉄のとある駅。

「発車時間調整のため1分停車しまぁ~す。」

とのアナウンスにメゲた瞬間、R25が目に入った。

そういえばダンナがたまに持って帰ってくるのはコレね。

ここからY駅までアバウト18分。暇つぶしには丁度いいわね。


推定年齢45歳の主婦R子(仮名)はR25を手にした…が


あらいけない、思ったより薄いのね。2冊もとっちゃったわ。

戻さないと…


「間もなく発車しまぁ~す。」


…仕方ない、乗っちゃおう。

あら、意外と空いてるのね、座っちゃいましょ。

しかし2冊…1冊カバン入れないと…

ふと目を前にむけると、向かいの席のお兄さんが睨みつけている。

あらやだ、バレちゃったのかしら。ごまかさないと…。

とりあえず丸めて…やだ、広がっちゃった!


そう、R25は意外と固い。


どうしましょ…とりあえずなんとかしなくちゃ…。

お兄さん、まだ見てる…やだわ、非常識な女と思われているのかしら私。

ああ、なんとかしてごまかしたいのにっ!


主婦R子は焦った。しかし焦燥が手違いを導いた。


あらやだ、滑った!


そして1冊が床に落ちた。


どうしましょ…拾う訳にもいかないし。

ああでも2冊取ったのがバレちゃったわ!

なんてこと!

こう見えても一応それなりの家庭の主婦なのよ!?

2冊も取るなんて、ああ、なんてさもしい女と思われてるのかしら!?

なんだか視線が痛い、痛いわっ!

くっ、くやしいっ!!

ああ、なに、お兄さん、拾ったじゃない!?

何?私がこんなに恥ずかしい思いをしているのに、拾って、しかも平然と読んでるわっ!


きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。

ことアタクシが生き恥さらしてるのは貴方ごときにR25を読ませる為じゃないのよ!

きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。


もう、こうなったら仕方ない、奪い返すしかないわ。(←なんでやねん(笑))

よーし、降りるフリして奪い取ってやるわ!

いっくわよぉぉぉ、良家の主婦のプライド、目に見せてくれるわよっ!


「これ、アタシのだから!」


呆然としてるわね、ふふふ、アタクシの恥に比べればどってことないわよ、

ふんっ!


そして、ドアが閉まって列車が行き過ぎた…。


はぁ、とんだ恥かいちゃったわ…。


主婦R子は読む事なく、2冊のR25をゴミ箱に投げ込んだ。


まったく、今時の若い人は非常識なんだからっ!


主婦R子はつぶやくでも叫ぶでもなく、視線だけで誰に問う訳でも語り、

次の列車を待った。


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