第27話 …え? え? なんて言った?? ー 一帆sideー
「んで? あの後どうなったんだよ」
俺らは佐久元くんに連れられ、体育館の裏に来ていた。お昼とはいえ、まだ4月の終わり。風は少し肌寒い。
「いや、別に……色々アトラクションとか乗って、アイス食べたりして……さ、最後に観覧車乗っただけですけど…?」
「へぇ〜〜?? それで?? 旦那はどこで告白したんですかい? はっ! ま、まさか柚香の方からとか!?」
俺はうるさい優希の頭を叩く。佐久元くんも気になるらしく、僕の方を凝視している。
「……か、観覧車の中で、俺が、言った……。付き合ってほしいって。そしたら柚香、泣き出して…」
そこまで言って、俺は固まった。
よ、よ、横からすっげえ睨まれてる……。
「柚香が…何だって? よく聞こえなかったんだよ。ってことで、もう一度。柚香が何だって??」
「え、えと……ゆ、柚香も俺のことが好きだって、言ってくれて…?」
佐久元くんは何も言わなかった。
ぎ、逆にすっげぇ怖いんですけど……。
いつまでもモゴモゴとして話さない俺に、佐久元くんは溜め息を吐いた。
「……はぁ。まぁ、柚香のことだ。どうせ嬉し泣きでもしたんだろ。それより…まぁ、なんだ。上手くいって良かったよ、おめでとな」
「……ん?」
俺は驚きの余り聞き返してしまった。
え? え? 何て言った?? ……え? おめでとって……え?? 佐久元くんは柚香が好きで、付き合った俺を恨んでて……え?
「俺としては、柚香を取られたのに良い気はしねぇけどな」
そう付け加えた佐久元くんは、どこかへ向けていた目線を再び俺に向け直す。
…で、デスヨネー。
だが、それ以上はなく、佐久元くんは話を続ける。
「……柚香のこと、どこまで知ってるか知らねぇけど。あいつは他人への頼り方を知らねぇからさ。彼氏になった以上、今まで以上に気を配ってやってくれ。んで、2人が……ってゆか、柚香が幸せになってくれれば俺は満足なんで。だから、柚香をよろしく頼む」
そう言うと佐久元くんは頭を下げた。
佐久元くんは好きな人のために、身を引いて頭を下げるために俺を呼び出したのか…? 何で? 何でここまでするんだ?
佐久元くんの行動に、俺は苛立ちを覚えた。
「なん、で…? 佐久元くんがそこまでするんだよ…。佐久元くんは柚香の何なの!?」
……これは嫉妬だ。
佐久元くんは俺の知らない彼女を知っている。佐久元くんは彼女の幸せを願っている。佐久元くんは彼女のことが好き。佐久元くんは……。
色んなことが、色んな気持ちが体の中を駆け巡る。感情任せに俺は佐久元くんを見る顔を険しくさせた。
いきなり怒鳴り出した俺に、頭を上げた佐久元くんは驚いた様子を見せた。そして、佐久元くんは口を開いた。
「あ、あれ? 俺、お前に言ってなかったっけ? 俺、柚香の兄なんだよ」
「へぇ〜、お兄さんなんかぁ〜。それなら心配もするよなぁ〜。へぇ〜、お兄さん…………ん?? お兄さんっ!?!?!?」
今まで空気と化していた優希が俺の気持ちを代弁してくれた。
「おぅ。あ、この事、誰にも言うなよ? 柚香にも、知ってるってことバレねぇようにしろよ? …まぁ、だから柚香のことで聞きたいことあったら、いつでも聞いてくれていいから。教えられる範囲で教えてやるよ」
「…は、はぁ」
俺は、ただそう返すことしか出来なかった。
「……ばぁ〜か。もう、聞いちゃったよ」
近くで柚香の声がした気がした。
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