第25話 ボクって そんなに魅力ないのかぁ〜……。ー霰sideー
「……お前、何知ってんだ??」
そーすけの言葉が心に刺さる。胸が、少し痛い。
やっぱり、覚えてない………か。だよね、最後の日に会ったのは雹牙のフリをしたボクなんだけどなぁ〜。
「……あ、跡取りって…? 何の話?」
まだそこにいた桜井さんは、私たちの会話を不思議そうに首を傾げた。
この反応ってことは、桜井さんは そーすけの家のこと知らないんだ………何かちょっと嬉しいかも。
あんなに仲が良い桜井さんの知らないことを知っている。その特別感がボクの頬を緩ませた。
「……おい、場所変えるぞ」
そーすけは知られたくなかったのか、苦いものでも食べたような顔で言った。
「俺、
桜井さんに そう言い残すと、ボクを一瞥し、廊下へと出て行った。
「はいはい、分かってますよ〜」
ボクが逃げるとでも思ってるんだろうか?そんなに怖い顔しなくても逃げないのに。 てゆうか、そーすけは もう『僕』じゃなくなってる。ボクもそろそろ止めないとだよなぁ〜〜。
ボクが自分を『ボク』と言うようになったのは、そーすけと出会ってからだ。 懐かしいなぁ〜。
そんな過去を思い出しながら、ボクは そーすけの後を追った。
「……ここなら良いか」
宗介が連れてきたのは屋上への階段。ここなら人も来ないし、人が通ってもばれにくい。
「なぁに? こんな人気のない所に連れ出して……ボクになにかする気?」
宗介はそんな冗談さえ許さない、怖い顔をしていた。
「……もう一度聞く、何でお前が知ってんだ?」
「質問に質問を返すようで悪いんだけど、雹牙のことは覚えてるんだよね?」
ボクの質問に、宗介は少し戸惑っている様子だった。
「……お、おう。誰もいない公園で遊んでたら声かけられて、そのまま…」
宗介はそのまま黙り込んでしまった。
どうやら頑張って思い出しているらしい……のだが、一向に思い出す気配はない。
なんだろう、宗介の目にはフィルターでもかかってるのかな? ボクだけ覚えてないってどういうことだよ。
「はぁ……そーすけは酷いね。ボクから ボクのものを奪ったくせに、ボクのこと覚えてないなんて……」
“ボクのもの” 。その言葉に宗介は小さく反応した。
「……ボクって、そんなに女の子に見えない? そんなに…魅力、ないのかな…………」
「ぁ、ちがっ!」
宗介が何か言おうとしたとき、ボクらは声をかけられた。
「あーちゃん? どうかしたの? 早くしないと授業始まっちゃうよ?」
突然現れた雹牙の姿に、ボクらは驚く。そしてボクは何事もなかったかのように言った。
「ううん、なんでも。………ただの昔話をしてただけだよ」
ボクはそのまま教室の方へと向かった。一度も後ろは振り返らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます