第22話 ……お兄にだって、彼女くらい居るんだよ。 ー 一帆sideー


あの後、特に何もなく帰ることになった。


俺は家に帰ると、そのまま部屋に直行した。ベッドへとダイブすると、あの時のことを思い出した。











「楽しかったね」

「うん、ほんとにな」



観覧車を降りた後、当てもなくぶらぶらと歩いていた。



「あ、そう言えば一帆かずほ、さっき何て言いかけてたの?」

「へ? ……あ、あぁ、あれは、その………な、何でもないよ!」



俺は笑って誤魔化した。



『あ、あの……そ、そ、それで…さ。その……キス、してもいい?』



………って聞こうとしてたとか、絶対言えない!! 死んでも言えない!!!















俺は枕を抱えて足をバタバタとさせる。


あぁぁぁあああああああ!!! ほんっと、俺、何やってんの!?!?


バタバタと煩かったらしく、部屋のドアが思いっきり開かれた。


バンッ!!!!



「お兄、うるさい!!!! 何やってんのよ!!!!」

「あ、ごめん」



妹の香帆かほだ。俺より男みたいなこいつは、いつもこんな感じ。俺が部屋で何かしてても御構い無しに入ってくる。



「なぁ、ノックして返事待ってから入れって いつも言ってるだろ? もしも、お兄がいかがわしいことしてたら どうするんだよ」



俺はため息を漏らす。



「は? そんなこと知らないし。ってか、お兄、隣に妹のあたしが居るのにそんなことしてるわけ? さいてー」

「もしもって言ってるだろ! もしもだよ、! 大体、お兄が彼女連れて来てたらどうするんだ」



香帆は「彼女」という単語に固まった。どうやら俺からその単語が出てくるとは思ってもいなかったらしい。何とも失礼な妹だ。



「……お兄に、彼女?? ………っぷぷ……っぷははははは!! ないない、絶対ない!!! お兄に彼女なんて出来るわけないじゃん!」



肩を震わす妹に、俺は思わず言ってしまった。




「……お兄にだって、彼女くらい居るんだよ」



その後、妹がフリーズしていたのは、正直 悔しかった。














ーー翌日の学校にて。



「………なぁ、一帆くん? そ、そ、そんな怖い顔しなくてもいいんじゃない??」



俺はメールで言っていた通り、優希ゆうきに心の底からのお礼をしようとしていた。



「いやいや、昨日は素敵なメールを送ってもらったし? お礼はきちんとしないとね?」



俺は笑顔で優希へと近づく。



「あ、いやぁ〜、そのぉ〜………あ、そ、そ、それよりさ! どうなった?? 告白、した??」



“告白” の2文字に俺は思わず固まる。どう答えようか悩んでいると、後ろからも声をかけられた。



「それ、俺にも聞かせろ。……取り敢えず、場所変えようぜ」



いつから聞いていたのか、後ろには佐久元くんが立っていた。俺の意見は聞かないらしく、佐久元くんはどこかへと向かっていく。


……仕方がない、着いて行くか。


俺は優希に目配せすると、2人で佐久元くんの後を着いて行った。


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