第17話 ……え? ナニソレキイテナイ。 ー宗介sideー


……うん、こうなると思ってた。


俺は今にも見えそうな、目の前の何とも言えないオーラを感じていた。


だって、良く考えてみてよ? 香樹こうき菅原すがわらくんは柚香ゆかのことが好きで、柚香は香樹のことが好き。香樹と菅原くんは、いわゆる恋敵ってやつでしょ? こんな空気にもなるって。


俺は2人を交互にチラチラと見ながら、そんなことを考えていた。



「……」

「……」



遊園地の中へと入ったが、誰も口を開こうとしない。


俺は横を歩いている香樹を横目で見上げる。



『くっそ。あいつのこと誘うんじゃなかった。柚香が菅原と仲がいいみたいだったから、いたら少しは元気になるかなと思ったのが そもそも間違いだったんだ……くっそ』



……って顔してるなぁ〜。

とか考えていたら、どうやらニヤニヤしていたらしい。



「……お前、何で俺の顔見てニヤついてんだよ。気持ち悪りぃなぁ」

「なっ! 気持ち悪いとは失礼な!」



全く、香樹ってば………お?


香樹にばかり気がいっていた俺は、後ろを歩いていた2人の存在を思い出し、耳を傾ける。



「………あ、えと……一帆も来るとか、何か意外だったな」

「そう? 優希ゆうきとかと結構来るけど」

「あ、そうなんだ………」



え、何、この会話!? ものの数秒で会話が終了しちゃったけど!?!? ほ、ほら柚香も困って香樹のことチラチラ見てるって。


俺は柚香たちに視線を送りながら香樹に話しかける。



「香樹、柚香が困ってるみたいだけど……?」

「あ? あぁ」

「………えっ!?」



それだけですか!?!?


何事かと香樹の方に顔を向ける。


だって、香樹だよ!?!?

柚香のことになると ただの変態になる、あの香樹がだよ!?!?

柚香のことで反応しないなんて………しかも、男と何か話してるのに!!!!


あれですか、「柚香は俺のことが好きだから、別に誰と喋ってても問題ない」的なあれですか。何なんですか、ムカつきますよ。



「お、あれ乗ろぉぜ」



俺が何を考えているかも知らずに、ジェットコースターの方へと向かう香樹。そんな香樹の後ろを俺たち3人は無言でついて行った。







「あと2名様でしたらご案内できますが、どうされますか?」



俺らが4人グループだと分かったらしい案内役のお姉さん。


……この人すげぇ〜。


そんなお姉さんに、俺は密かに感激した。いや、それが仕事なのだが……だって、こんな空気を醸し出して、ほぼ2人ずつで分かれていると言っても良いくらいの俺らを4人グループだと理解して、なおかつ平然と話しかけてきたんだよ??


俺はチラリと横を見た。


さて、香樹は何て返すかな? やっぱり あれかな?

『柚香と離れるの嫌だから、あとからで』って言って、次のに4人で乗る感じかな?



「じゃ、2人で」



……Oh。

これは予想してなかったぜ。



「それでしたら、一番後ろが空いていますよ。後ろのお客様、すいませんが次のをご案内させていただきます」



丁度、俺ら2人で定員人数になるよう。まぁ、最初の説明からして そうだとは思ったけれど。でも、それを香樹が選ぶ理由が理解できなかった。



「安全バーを下まで降ろし、カチリといったら安全バーから手を離してお待ちください。今から案内員がロックがかかったか確かめに回りますので、しばらくお待ちください」



先ほどのお姉さんの声でアナウンスが入った。

動き出したジェットコースターの中から、あの空気から救い出してくれたお姉さんに心で感謝した。



「なぁ、香樹くんよ。お前、どうしたわけ?」



隣に座っている香樹へと質問をする。

だって気になるじゃん!!



「……別に」

「別にってお前……別にじゃないだろぉぉおおおおおおおお!?!?!?」



話し終わる前に、ジェットコースターは下降を始めた。



「お、おい! 口 閉じろ! 口!」

「ぬぁぁあああああああああ!?!?!? んんんんんんんんんんぉぉぉおおおおおおお」

「……」



最初は俺のことを気にかけてくれていた香樹も、途中から呆れていただろうな……想像が出来てしまうのがとても怖い。










やっとのことで終わったジェットコースターが、最初の位置へと戻ってきた。



「え!? ちょ、宗介そうすけ 大丈夫!?」



列の一番前に並んでいる柚香が身を乗り出して心配をしてくれている。


「だひしょうふだお。もんだひなひから」

「……う、うん?」


柚香はどこか不満そうな顔をして見てくる。しかも、横からため息までもが聞こえてきた。


「はぁ。ほら宗介、行くぞ」


周りを見ると、どうやら俺たちが一番最後のようだ。急いで香樹の後を追い、階段を下る。



「……大丈夫か?」



もうすぐ階段を下り終わるところで、香樹がいつになく優しく話しかけてきた。



「だ、だひしょうふだお」



……くっそ、まだ口の中が乾いて上手く話せないんだけど! つか、ハズっ!! 香樹も震えてるしっ!!



「そ、そっか……っ……っぷ……まぁ、これでも飲んで次行くか」

「ん……」



俺は渡されたジュースを見つめて固まった。

え? 何でこんな優しいの!?!? どうした香樹!?!? ……てゆか、次って?



「ほら、早く行くぞ。じゃないと2人が戻ってくるだろぉが。今日は、あの2人をくっ付けるために来たんだからよぉ」






















………え?? ナニソレキイテナイ。



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