2話 : 俺は決してストーカーなどではない。
あの
「やっと中学だぁ〜〜〜〜!!!」
「うん、分かったから。今日でその言葉何回目だよ」
俺のテンションがウザかったらしく、横で宗介が冷たい目をしている。いや、表情自体が死んでる??
つーか、一緒に聞こえてきた大きな溜め息も今日で何度目だよ。人のこと言えねぇじゃんか。だって待ちに待った中学だぞ!? 抑えきれるか!!
そう、俺たちは今日から中学生になる。俺たちの通う中学校は、2つの小学校が合併してなる2小1中というやつだ。そして、それは今日から毎日柚香と同じ学校に通えるということ。
ちなみに、近所にある柚香の家は道路を挟んで向こう側。2分で着くそこは校区外なのだ。
そんなハイテンションの俺は、宗介と中学校へと向かっていた。柚香はおじさんと一緒に来るということで、仕方なく むさ苦しい男2人で登校しているのだった。
「そう言えば、俺、妹さんに会ったことないよね? つか、名前は?」
「
宗介が俺の頭を叩き、続く言葉を妨げた。そんなに柚香に興味がないってか!? いや、興味があっても俺は怒るぞ。
「いや、俺はそこまで聞いてないから。つか、そこまで知ってるとかストーカーかよ」
少し呆れたのか引いているのか、宗介は真顔で俺に言い放つ。何だよ、それだけ好きなんだよ、悪いか!
そんなやり取りをしている内に中学校へと到着した。学校から家までは15分程度で着く距離だ。話しているとあっという間にも感じる。
「クラス〜クラス〜♪ 柚香と同じかなぁ」
と鼻歌交じりに、下手くそなスキップしながら体育館へと足を運ぶ。体育館の入り口に貼られたクラス表を見る。
「…っと………あ、俺は1組だ。柚香は……あれ?」
同じクラスに名前がないぞ!?
何度も名前を確認するが、「桜井」の「さ」すら居なかった。
「俺も見つけた。4組か。
隣から柚香の名前が出てきたので、反射的に目を向ける。
「どこだ!?」
「え、あ……4組、だな」
宗介の指差す所には確かに桜井柚香の文字があった。涙目で宗介を睨むと、後ろから知った声が聞こえた。
「あらあら、香樹とクラス離れちゃったね」
「柚香ぁ〜。…何でこいつが柚香と……」
振り返るとそこには制服姿の柚香と、スーツ姿のおじさんがいた。あまりに可愛い制服姿を視界に収めた俺は、全てのことがどうでもよく感じた。……いや、どうでもよくはねーけどさ。
「でも、みんなには内緒だし、丁度良かったかな?」
柚香の斜め後ろには義父さんがいる以外、周りには職員もちらほら。生徒も多くはいなかった。そんな義父さんに会釈し、話を続ける。
「そうだな。みんなには内緒だもんな。俺ら2人の秘密だもんな!」
「……なんかごめん。俺、どっか行くわ」
その場から立ち去ろうとしていた宗介の肩に手を置き、笑顔で止めてあげた。ステルス能力使って存在消してたんだろ? それとも何だ? 元々陰薄いってか??
「ひっ……い、いや〜聞くつもりはなかったんだけどね? いつも香樹が自慢するからさ……しかも、そんな目の前で秘密のこと喋られても、ねぇ?」
「そぉ〜す〜け〜くぅ〜ん」
問答無用とばかりに笑顔で迫る。きっと、漫画やアニメでは血管が浮き出たマークがデコ辺りに出ているだろう。それか背景に「ゴォォオオオッ」って文字が付いてるかだな。
「香樹、いいじゃん。3人の約束! クラスに知ってる人がいる方が安心だもんね」
「そぉ〜だよね〜」
宗介に向けていた笑顔とは別の、デレッデレの笑顔を柚香に向ける。そしてもう一度宗介の方を向くと、「助かった」という顔をしている宗介の肩を掴んだ。
「宗介、お前に柚香を任せたぞ。……柚香に何かあったら、ただじゃおかねぇかんな」
俺は今日イチで真剣な顔をした。もちろん、最後の一文は柚香に聞こえないように。
「お、お、ぉぅ。任せとけ」
よしよし、これで何かあれば心置きなく痛めつけてやる。……まぁ、柚香が駄目って言ったら止めるよ、絶対‥‥多分‥‥きっとね?
時間が迫っていることに気がついた柚香は、俺らに声をかける。
「あ、もうそろそろ時間じゃない? クラスに行こうよ」
どうやら父兄は体育館で待機らしい。おじさんへ別れを告げると、在校生の案内に従い、俺らは教室へと向かった。
中央階段を上がり、1年生のクラスがある3階へと辿り着く。この階段を挟んで左が1、2、3組、右が4、5組となっていた。
「じゃあ、私たちはこっちだから。またね、香樹」
「じゃ、じゃあな」
宗介も、柚香の隣で遠慮気味に手を振っている。涙目に見えるのは、俺が脅しすぎたからだろうか。
てゆうかさ……
「何で俺だけ違うんだよぉおおおお!!!」
俺の横を通り過ぎる同級生よ。廊下で叫んでいる俺を、変な目で見るのは止めてくれ。
「だ、大丈夫?」
「……俺に、触れるな。悲しさのあまりお前を殴るかもしれねぇ」
「!?!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます