第20話
「あたしはスニェジカっていうの!」
少女はエルベと同じく、重たそうなバスケット達をいとも容易く手に持ち、おまけに飛び跳ねてみせた。バスケットの中身はぴくりともしないことから、やはり身体能力が高いことがはっきり分かる。
「改めて、妹のスニェジカだ。こっちは協力者のヒイロとサヨ。なんと、他の星から来たそうだ!」
いきいきと嬉しそうに紹介され、ヒイロは少しはにかみながらうつむく。一方のサヨは、相変わらず首を傾けてスニェジカを見つめていた。
「すごいわ!ねえ、食事をしながら他の星のお話を聞かせて!」
更にはスニェジカまで、演技かと思うくらい喜んでみせるものだから、ヒイロは更にこそばゆい感じになってしまって、しばらく顔を上げられなかった。
「さぁ、それじゃあ色々なことを話しながら、楽しく食事としようじゃないか」
色とりどりの食事が並ぶ。草木が生い茂っているが、ヒイロはもしキャンプをしたらこんな感じなのだろうか、と特に不快に思うこともなく座っていた。並べられたものは馴染み深いようなものもちらほら見受けられたが、やはり星の環境の差からか、人間であるヒイロにとっては味の想像もつかないようなもの、食欲を減衰させるような色のものの方が多かった。サヨは早速いくつか食事を口に入れては品定めをしている。ヒイロも続くように、青い菊のような粒の入った料理を口に運ぶ。シチューに似た、クリーミーな味がした。
スニェジカは大変に好奇心が旺盛な少女だった。ひとたびヒイロが自分のことを話せば、彼女はヒイロの言葉の途中は黙って聞いていたが、終わるとすぐにヒイロのことを質問責めにした。
「きみは随分と他の星のことが好きなんだね」
うふふ、照れたようにそう笑う彼女は、悪戯好きの子供の顔を併せ持っていた。
「ここではね、えっと、ヒイロの言うタイヨウ?に当たる星以外の星の存在を知っているのは、あたしたち一族だけなの。だから今まで一緒に話せる人がなかなかいなくって、つい興奮しちゃったわ」
昼と夜の存在。ヒトの食事。高度に発達した機械の働き。それ以外にも様々なことを話した。そのひとつひとつを聞くたびに、スニェジカの気持ちが高まっているのは、他の者達も本当によく分かっていた。
「いいなぁ、あたしもそっちに行って勉強してみたいわ」
スニェジカがそう呟いた頃には、もうほとんどの料理がなくなっていた。空になった器を重ねて、今度はエルベが「自分だけで十分だ」と後片付けに席を立った。
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